武道館が31棟建つ巨額ムダ事業――公立中学を舞台にした文科省のハコモノ行政の闇

剣道防具と柔道畳の費用総額を解明

 剣道防具は、40人学級として40式購入したら、「5万円×40式=200万円」となります。これを仮に全国で2000校が購入するとすると、これだけで40億円です。  金額が大きいのは柔道畳です。柔道畳を各校が何枚用意すべきかは文科省から通達されておらず、一律ではありませんが、畳を柔道場に適した正方形にパズルの様に敷き詰めるには、自ずから枚数は決まります。狭い順に「50畳→72畳→98畳→128畳→162畳」の順です。この中では128畳(八間四方の正規の試合場1面分)を敷くというのが過不足ない理想的な広さと思われます。1組2名の稽古に十分な広さは6畳と言われており、40人学級(20組)の生徒が同時に安全に稽古するためには、「20組×6畳=120畳」が必要であり、それに照らし合わせると128畳が理想のスペースと言えます。128畳は212㎡ですので、「連載第2回」に書いた柔道場設置の上限面積250㎡は、この128畳の畳(212㎡)を敷くのに十分な面積として設定されたものと推測されます。  そうすると、標準的な畳の設置には「畳1枚3万円×128枚+付帯用具=400万円」というのが1つの柔道場当たりに必要な費用となります。柔道畳というのは半永久的に使えるものであると誤解している人がいますが、耐用年数10年前後の消耗品ですので、結構頻繁に入れ替えが必要です。仮に4000校が柔道畳一式を購入したら、「400万円×4000校=160億円」です。  中学校武道必修化には、この他にも授業や指導者の質を向上させるための実践研究や研修などを行う武道等教育推進事業費なども発生します。ですので、「武道場整備費+教材費+その他費用」の合計は最大限で考えると新国立競技場旧案2520億円並みの巨額費用になるのです。
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国立代々木競技場なら20棟、日本武道館なら31棟建つ巨額費用
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