新屋演習場から南側を撮影。この美しい海岸線も被害を受ける<撮影/秋田放射能測定室「べぐれでねが」 めたぼ氏>
ここまで3回*にわたり、秋田市新屋(あらや)のイージス・アショア基地が核攻撃を受けた場合の想定被害を資料に基づいて論じてきました。
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イージス・アショア配備は秋田市民を危険に晒す愚行。空撮で痛感するそのリスク
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秋田配備のイージス・アショアが戦術核攻撃を受けたとしたら。シミュレーションを見てもなお、配備を進めるのか?
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秋田・イージス・アショアが核攻撃で狙われたら? 放射線と熱線が終わると、次は衝撃波とFirestormが街と人を襲う>
ここまでで非常に暗い見込みの中ながら、秋田市の東半分は機能を失わないという評価をしてきました。しかし都市核攻撃の場合、
黒い雨と呼ばれる放射性降下物によって風下側は甚大な打撃を受けることは常識となっています。
前々回にご紹介したように、秋田市は1年を通して西の風が優勢で、放射性降下物は被害の少ない秋田市東部に降り注ぐ可能性が高いことが分かっています。被害を軽減する東の風となる可能性は年を通してたいへんに低いです。
ここでは、最大可能性かつ最悪想定として西の風であるとして論じます。
なお、SNS等で「
読まずに論評、超ノー力者」の集団(カタログミリヲタとかネトウヨとかネトサポとかネットイナゴとか言われる文字を眺めるだけの方々)が完全に的外れなことをわめいているようですので、本連載で指摘してきた事の基本中の基本をおさらいしましょう。翼賛デマゴーグによるデマゴギーは、見逃してはいけません。
1. 秋田と萩へのイージスアショア配備は、
日本人のお金で合衆国(ハワイ、グァム)防衛専用弾道弾迎撃兵器を配備し、日本人が運用するものである。何かあっても合衆国軍人が犠牲になる可能性は低い。これは欧州イージス・アショアとの本質的且つ決定的違いである
2. THAADに比して安いとされていたユニット導入、運用コストは、すでに6千億円を超え1兆円を伺っており、
極めて高コスト。イージス艦と異なり他用途への転用ができないし、そもそも
日本本土防空を強化どころか大きく弱体化させかねない
3. イージス・アショアは基本的に中間飛翔段階迎撃を担当するので、既存の日本弾道弾防衛の穴とされてきた高層終末軌道弾道弾防衛の穴は塞がらない。(THAADでなければ塞がらないが、無実績のSM-6追加配備でカタログ上は一部代替できる可能性はある)
4.秋田と萩への配備では
関東、中京、関西という最重要防衛対象の防衛には殆ど役に立たない。カタログやパンフレットの鵜呑みでは理解できないが、
側方迎撃は反応時間、大角速度などの点で極めて不利。また
陸上固定基地は極めて容易に無力化される
5.北朝鮮の
対米核抑止は、過去30年を超えて北朝鮮人民200〜300万人の犠牲で獲得したもので、北朝鮮の国家・体制維持の柱であり、手放すことはあり得ない
6.北朝鮮は、
数は少ないが合衆国を直撃しうる核を保有している可能性があり、すでに合衆国は北朝鮮を核保有国と認識している。これは合衆国の対北外交に顕著に表れている
7.スエズ危機をみれば自明だが、
合衆国は、自国を直撃しうる核の脅威がある場合、例え圧倒的な報復核戦力を保有していても極めて消極的となる(核の傘の破れ目)。これは英仏が国力に比して無謀といえるフルセットの独自核抑止力保有を目指した大きな要因とされた
8.核の傘の破れ目(核の破れ傘)は、70年代から90年代初頭のソ連邦崩壊にかけて深刻に論じられており、
核抑止の常識である(核のパイ投げなどと嘯いている間は三下である)
9.北朝鮮にとり、
日本はすでに何の価値もなく路傍の石ころ同然の扱いである。合衆国に外交的に勝利すれば日本は全面服従する。従って日本とは交渉しないし相手もしない。路傍の石ころは放置
10.秋田・萩イージスアショアは、その立地から対米核抑止力の確実性を揺るがす一方的挑発行為であり、存在を無視できない(靴の中に入った小石)
11.核抑止において先制奇襲核攻撃による探知、追跡、迎撃能力、報復核戦力の除去は、イロハのイである。故に
秋田・萩イージスアショアは最優先の排除対象となる(靴の中の小石は除去する)
12.秋田・萩イージスアショアは、合衆国の関与がデータリンクと兵器提供、訓練への協力であり、合衆国の直接関与はない。従って
スエズ危機と同じく「核の傘の破れ目」となる可能性が高い。この場合、
合衆国は積極的には反撃への関与をしない(秋田・萩イージスアショアのみ撃破・排除の可能性)
13.弾道弾の防衛の最大の弱点として、攻撃側は、極めて安価かつ短期間で弾道弾迎撃への対抗措置を実用化できる。そもそも1970〜80年代に構想された弾道弾防衛対抗技術で合衆国式弾道弾防衛はかなりの程度無効化され得る(実例がKN-23)
なお筆者は、常々述べてきているように
洋上配備MDイージスとTHAAD、重要拠点はPAC-3によるというクラシックな三段迎撃論者です(これでもKN-23には対策がない*)。但し、
対抗戦力を保持した上での関与外交論者です。当たり前ですが、
戦争は外交に失敗した無能な国家が行う最終手段です。あくまで外交による解決が第一です。そして
関与政策に重きを置いていた自民党であったにも関わらず過去二〇年間で日朝関係を断絶させたのは、対朝主戦論者である安倍晋三氏です。まさにマッチポンプです。
〈*KN-23SRBMは、現状の合衆国式MDの隙を突くものであって、ロシアでは合衆国のMDを無効化するICBM等の開発が急速に進んでいる。この分野ではロシアが圧倒的に合衆国を凌駕している〉
筆者は、「自衛艦隊過剰負荷論」などといったご都合主義の嘘は相手にしておりません。
シビリアン・コントロールの怠慢といえる政治的パフォーマンスで、破壊措置命令を3ヶ月毎更新の「常時発令」で2016年以降三年以上放置しているから、自衛艦隊が疲弊するのです。そもそも、イージスシステムの更新と4隻から8隻への倍増によって近々に8隻中1隻展開で平素は間に合うことを隠して
「自衛艦隊過剰負荷論」などとは、不誠実な翼賛デマゴギーも甚だしいです。己の無知以前に恥を知りましょう。
それでは、本題に進みます。