秋田イージス・アショアが先制核攻撃されたら? 短期的被害のあとに続く、黒い雨と人口減少による衰退

黒い雨(被爆直後のフォールアウト)

 被爆数分後の地上は、原子雲(キノコ雲)に覆われるために日没直後のように暗くなります。一方で地上はFire Stormの猛火に包まれています。  そういった中、被爆10〜30分後に原油のように真っ黒なタール状の雨が降り始めます。この真っ黒な雨は、約12時間後まで降り注ぐとされています。この黒い雨については未解明なことが多く、その実態と影響についての科学的な解明もたいへんに難しい状況です*。 〈*“黒い雨”についての科学的知見, 今中哲二, 京都大学原子炉実験所, 2013/09/26にわかりやすくまとめてある〉  大きな火災が起きた場合、地上から巻き上げられた大量の煤や灰、埃を核として雨つぶが成長し、放射能を持たない黒い雨となることは知られています。  都市核攻撃の場合、大量の瓦礫が発生し、可燃物が燃えます。その埃と灰や煤と核弾頭の残骸*が原子雲を成長させる強い上昇気流と共に上空へと吸い上げられ、雨滴の核となって黒い雨が降るとされています。一方、大気中に水分のない砂漠で行われた合衆国の核実験では、黒い雨は観察されていません。ムルロア環礁で実験を行ったフランス、草原地帯であるセミパラチンスクで実験を行ったソ連邦の核実験では黒い雨が観察されています。 〈*核弾頭は、蒸発してしまうために黒い雨に取り込まれないという異論もある。黒い雨については、膨大な証言が残されている一方で、科学的検証があまりなされておらず、半減期による減衰後の核実験で上書き汚染されたために、科学的研究対象として着目された1970年代以降には分析がきわめて困難となっていた。奇跡的に上書き汚染されずによく保存されていた痕跡からは原爆による核分裂生成物質(FP)が検出された〉  この雨は、核爆発によって生じた爆弾の微粉末や、中性子照射で発生した誘導放射能を取り込むことによってたいへんに強い放射能を帯びた雨滴になるとされています。  広島への核攻撃では、国によって爆心地の北西部に1時間以上降った「大雨地域」(南北19km、東西11km)と1時間未満の「小雨地域」(南北29km、東西15km)に分類され、この「大雨地域」在住の被爆者にのみ健康診断やがんなどの特定疾患発病時の被爆者健康手帳の交付を行われており、その線引きの妥当性が長年厳しく争われてきています*。これは長崎でも同様です。 〈*NHK特集 黒い雨 ~広島・長崎原爆の謎~ 1986/01/17
黒い雨の推定降水量分布

黒い雨の推定降水量分布
黒い雨の降雨域の見積もりが著しい過小評価であるという指摘は長年続けられている。元気象庁職員で理学博士の増田善信の研究では、従前の「大雨域」とされてきた領域が「小雨域」を大きく上回り、逆に「大雨域」で全く降雨のなかった地域もあるというものである。小雨域に至っては、島根県との県境にまで広がっていたと増田は指摘している
広島原爆後の“黒い雨”はどこまで降ったか, 増田善信, 天気,36.2., pp.13-23, 1989/02

重い放射線障害を起こす強い放射能を持つ「黒い雨」

 この黒い雨は、フォールアウトによる被曝(二次被爆と便宜上呼称される)の大きな原因とされ、多くの証言で、きわめて重い放射線障害を起こす強い放射能を持つとされています*。 〈*この黒い雨がどの程度の放射能を持っていたかは、科学的には未解明である。初期観測の欠落、その後の米ソ中などの核実験による上書き汚染により、再現はきわめて難しい。そうではあるが、国の被爆者への対応においては、被曝の重要な目安として使われてきている〉  広島での3日以内の入市被爆(核攻撃後の市街地に立ち入った兵士や市民が被った被曝)では約8万人が被曝したとされ、そのうち5万9千人が5ヶ月以内に死亡したという分析もあります*。 〈*社会実情データ図録より〉  秋田市は、年を通して西の風が優勢で、南の風、北の風が続きます。西の風である場合、核攻撃による直接の被害が軽微であった秋田市東部全域から山間部にかけて、黒い雨が数時間降り注ぎます。この黒い雨によって被爆直後から数日間、無事であった市民も致死水準となる大被曝の脅威にさらされますし、その期間の救護、防災活動が著しく妨げられますし、住民の安全も脅かされます。  この黒い雨については、翌日以降の除染活動が考えられます。  広島・長崎への核攻撃では、黒い雨など放射線被曝への知識が市民、行政、軍隊すべてにきわめて乏しく、入市被爆などの二次被爆で命を落とす方や健康を大きく損なう方が多く見られたと証言が多数残されています。一方で国や合衆国による科学的研究は積極的に行われませんでした。  核攻撃後の民間防衛の基本中の基本の知識として、この黒い雨には絶対に接触しないことが求められています。広島・長崎の核攻撃では、放射線への知識がきわめて限られたごく一部の人を除き全くなかったことから、被曝による人的被害が全く抑止できませんでした。
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人口減少時代の今、都市の復興は至難
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*イージス・アショア関連の過去21回分の記事については以下参照。

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