前回、秋田放射能測定室「
べぐれでねが」 のめたぼ氏から陸上自衛隊新屋演習場付近からの空撮写真を提供していただきましたので、その写真をもとに秋田配備イージス・アショアが先制奇襲核攻撃を受けたときに生じる被害見積もりをしました。
今回から、ご紹介する文献、映像資料を基により詳細に、秋田配備イージス・アショアが先制奇襲核攻撃を受けたときに秋田市民が体験するであろうことを論じます。今回は、想定条件と基礎文献、映像資料の紹介となります。
イージス・アショア日本配備が、日本の弾道弾防衛に全く意味が無いことと、
その正体は、合衆国弾道弾防衛専用であることについては、昨年8月から本シリーズで厳しく指摘した後に、多くの専門家やジャーナリストが論じています。
合衆国では、日本を巨大イージス駆逐艦にする=使い捨てのレーダーピケット艦(Kamikaze迎撃における被害担当艦)にすると公言されていること*についても、HBOLにて横田一氏が報告し**、本シリーズバックナンバーでも解説しています。
〈*
Shield of the Pacific: Japan as a Giant Aegis Destroyer, Thomas Karako, CSIS Briefs, 2018/05/23〉
〈**
イージス・アショアの秋田・山口配備は「米国の基地を守るため」!?, 横田一, HBOL, 2019.06.28〉
弾道弾早期警戒能力、迎撃能力、指揮統制能力、報復核戦力が先制奇襲核攻撃において最優先の攻撃目標となり、それは核抑止力の信頼性確保のための定石であることは核抑止におけるイロハのイ*ですが、これについても本シリーズバックナンバーで論じておりますのでここでは紙面を割きません。
〈*但し、保有する核戦力すべてを先制奇襲核攻撃で用い、相手を完全に焼き払うという主張もある。全面核戦争は最終戦争であり、その後の駆け引き、交渉は一切無く絶滅しなかった方が勝ちと考えれば合理的ではある〉
なお誤解が多いのですが、
北朝鮮にとって日本は外交、経済、核抑止上の価値は全くなく、路傍の石ころに過ぎません。これは
安倍晋三氏が過去20年間主導し、何一つ成果を上げず完全に失敗に終わった北朝鮮封鎖政策の結果です。
かつての北朝鮮にとってきわめて重要なカウンターパートとしての日本の地位は、現在は
全く存在しません。筆者はかつて、自民党内に大きな勢力として存在した北朝鮮との関係を重視する勢力を「北朝鮮利権集団」として厳しく批判していましたが、第二次小泉訪朝以後、北朝鮮に対して封鎖政策を強化した結果、現在は北朝鮮への影響力も交渉力も皆無となり、重大な利害関係があるにも関わらず当事者としての立場も失ってしまった現実を見るにつけ、封鎖政策は誤りであったと結論づけるしかありません。
「主戦論は概して誤りである」を自ら実証することとなりました。
北朝鮮にとっては、
合衆国防衛専用兵器=イージス・アショアが日本に配備されることと
在日米軍の存在のみに意味があり、前者が日本のお金で配備され、日本人が運用し、それにより対合衆国核抑止力の信頼性が僅かでも揺らぐのであるならば、
先制奇襲核攻撃によって指揮統制能力ごと消滅させる=秋田・萩イージス・アショア、首相官邸、霞ヶ関、立川市を先制奇襲核攻撃するという選択肢が生じます。
日本は、北朝鮮にとってすでに交渉相手ではありませんし、日本配備イージス・アショアを巡っての対日譲歩は合衆国への一方的な譲歩であって、これは北朝鮮という国家の存亡を危うくします。北朝鮮は、対米核抑止力によって国家と体制を維持しているからです。この対米核抑止力は、200万人とも300万人とも言われる北朝鮮市民の犠牲によって得たもので、これを手放すことはあり得ません。
仮に
日本配備イージス・アショアが合衆国の手による配備であるならば、米朝交渉で駆け引きをする余地が生じます。
北朝鮮が対合衆国本土核攻撃能力を持つ可能性がある以上、
合衆国にとっては日本人が数万人から数百万人生きたまま焼かれても米兵が犠牲にならない以上、報復核攻撃のハードルは極めて高いものとなります。これが
欧州イージスアショアとの大きな違いであり、対日先制奇襲核攻撃の可能性を著しく高めます。
日本は論理学の教育がきわめて脆弱という大きな弱点を持ち、それは加速度的に悪化の一途ですが、この弱点は核抑止に関する議論を大きく阻害しています。巷で横行する
即物的な兵器スペックカタログ“偏重”談義など鼠の糞ほどに有害無益です。