シミュレーションをするにあたっての想定条件は以下のようになります。
◆
時期:2030年頃、イージス・アショア:運用中、配備先:陸上自衛隊新屋演習場、攻撃種別:先制奇襲核攻撃、爆発威力:50kt(強化原爆)、攻撃弾数:2〜3発(SM-3少数配備の場合)4〜5発(SM-6配備済の場合)、搬送手段:KN-15(北極星2号)発展型*、着弾数:1〜2発、爆発種別:最適高度上空核爆発(800m程度)。
〈*固体燃料単弾頭MRBMとして運用を想定、射程2000km、弾頭重量1t、CEP(半数必中界)100〜500m、初歩的なチャフ(欺瞞紙)やデコイ(囮)、模擬弾道弾だけでなくMaRV(機動再突入体)の装備を想定する〉
◆
気象条件:10月、晴天、西の風10ノット(約5m/s)とします。秋田は一年を通しで西の風が多く、次いで南の風であり、東の風は八月末から9月の一月未満です。従って、8月末から9月を除き核攻撃によるフォールアウトの効果はたいへんに高くなります。天候は、低高度核爆発であるために晴天でも曇天でも関係ありませんが、雨天ですと焼夷効果が落ちる反面、放射能による長期効果は大きくなります。今回は、都市攻撃が目的でなく基地の無効化が目的ですので、豪雨、豪雪、暴風で無い限り攻撃は実施されます。
〈*
秋田市における年間の平均的な気候, Weather Spark〉
◆
日時:10月の平日日中11時頃を想定します。この時間帯は、多くの人が日常業務で屋内に居ます。
イージス・アショアの致命的欠点から見えてくる合衆国の思惑
一般にICBM基地など強固に防護された標的への攻撃で考えられる地表爆発でなく
上空核爆発を想定する理由は、
イージス・アショアは、あくまで艦艇用弾道弾迎撃システムを配備できる海がないが故に内陸地に地上配備したもので、管制設備、ミサイル発射機すべてが地上に配備されており、対核爆発防護がなされていないためです。
命中精度を勘案すると地表核爆発は攻撃手段として最適とは言えず、
最適高度上空核爆発ならば半径500m圏内の人為的構築物を完全に破壊し、半径1500m圏内の人為的構築物を完全に無力化できます。更に
衝撃波により、半径2500m圏内の人為的構築物に大被害を与えます。従って、MaRV(機動再突入体)などによって迎撃を無効化した後に1発ないし2発の上空核爆発でイージス・アショアを完全に無効化できると考えられます。
これは、
イージス・アショアの本質的かつ致命的欠陥と言えます。勿論、地下施設化と強固に防護することによって対核爆発防護を行うことができますが、きわめて費用対効果が悪く、イージス艦による洋上配備や報復核戦力の強化に比して妥当性は皆無です。
以上は、陸上配備弾道弾防衛の本質的弱点なのですが、とくに前方配備固定基地=日本配備イージス・アショアにおいて極端に現れる欠陥です。これが合衆国が自前でイージス・アショア日本配備を行わない理由ではないでしょうか。要は、
日本人のカネと命を使ったロッキード・マーティン社の救済・支援であって、それ以外の意味は無いと筆者は考えています。
さて、着弾弾頭数を1にするか、2にするかですが、新屋演習場を中心とした500〜1000mの圏内に2発着弾する(実際には800mの低高度核爆発)場合と新屋演習場直上で1発が低高度核爆発を行う場合、放射能フォールアウトの効果以外は劇的には変わりません*。従って、ここでは簡略化のために
新屋演習場直上高度800mで50kt強化原爆が一発核爆発した場合を想定します。
〈*発威力が2倍になった程度では、効果の増倍率は、核出力の倍数の平方根か三乗根であり、散布界を考えると簡単のために一発が標的に的中したとしても大きくは変わらない。
但し、最悪想定となる秋田運河上での2発の核爆発では、油槽所、ガス基地の2次爆発を誘発し、フォールアウトの倍増もあって秋田平野全域への壊滅的打撃となる。
一方で西側海岸線での2発の核爆発の場合は、被害域が500m程度西に移動し、物理的被害規模が大きく縮小するものの、大量の水蒸気と砂礫を成層圏まで吸い上げるためにフォールアウトによる被害は甚大となる。
従って、これから行う被害想定は、最小規模のものであると考えるべきである〉