秋田イージス・アショアが先制核攻撃されたら? 短期的被害のあとに続く、黒い雨と人口減少による衰退

広域のフォールアウト

 黒い雨以外でもフォールアウトは生じます。フォールアウトは、風下側で広範囲で観察されますが、現在この試算は非常に多くなされています。風速10ノット(5.1m/s)で50ktの核爆発が生じた場合、1時間あたり100mSvの空間線量となる最大範囲は、風下側200km,最大幅15km、爆心地幅4km、風上側2kmという広い範囲となります。これは、秋田市、仙北市、盛岡市、宮古市を結んだ直線を更に40km太平洋上に伸ばした帯状の領域となります。但しこれはあくまでモデル計算であって、山や風向の変化、降雨による影響は考慮していません。  このフォールアウトは、核爆発1時間後を基準とすると、1ヶ月後に三千分の1に、1年後には十万分の1に減衰します。  地表核爆発と異なり、上空核爆発の場合は、残留放射能の減少が十分に早く、現在の市街地で10年以上にわたる残留放射能が原因の居住不能領域は生じないと考えられます。
理論的な初期放射線降下物等線量線

理論的な初期放射線降下物等線量線
風速10ノット(5.1m/s)で50ktの核爆発が生じた場合、1時間あたり100mSvの空間線量となる最大範囲は、風下側200km,最大幅15km、爆心地での幅4km、風上側2kmという範囲になる
平成25年度外務省委託 「核兵器使用の多方面における影響に関する調査研究」より
原典/Defense Nuclear Agency, Capabilities of Nuclear Weapons Part I Phenomenology, 1972.

人口動態から見た復興に及ぼす影響

 広島市では、核攻撃前の人口が33万6千人でしたが、核攻撃直後に13万7千人へと19万9千人の人口減少が生じています。広島市の人口が被爆前の水準に戻ったのは1953年であり、回復には8年を要しています。更に1925年から1940年までの人口趨勢(トレンドライン)に復帰したのは1975年であり、被爆による人口動態への影響が解消されるまでに30年を要しています。  この1975年までの間、日本は高度成長による旺盛な経済活動と人口増、地方都市への人口集中が生じていました。今日では、日本の人口は急速に減少しており、少子高齢化の進行、とくに安倍自公政権成立以降の出生数の加速度的減少によって平時においてもごく一部の巨大都市を除き都市部の人口ですら減少しています。  このような状況下、核攻撃級の打撃があった場合、その都市の人口が核攻撃前のトレンドラインに回復する見込みはありません。そもそも人口のトレンドラインは加速度的な減少であり、平時における人口維持も不可能であるという現実があります*。 〈*日本の人口動態予測は、21世紀末に人口半減というきわめて悲観的なものであるが、これには経済的社会的要因も含まれている。人口動態予測は、人類にとって唯一の正確に予測しうる未来とされており、少なくとも50年先の予測が大きく外れることはない。  これに対して、人口が減れば食い扶持が減って人口は回復に転じるという著しく楽観的な意見を述べる人物が散見されるが、その意見には全く根拠がなく、誤りである。人間は水たまりのミジンコではない。  悲観的な人口減少の予測が的中している事例は、旧ソ連邦・ロシアと日本が挙げられる。ロシアは、革命後の大粛清、第二次世界大戦(大祖国戦争)による3千万人ともされる大きな犠牲の影響と、1960年代以降の社会の停滞が原因である。  日本の場合は、政策的に強い人口減少圧力を過去80年間加え続けた結果であり、この人口抑圧傾向は安倍自公政権によって大きく加速されている〉
日本の人口動態予測

日本の人口動態予測 〜2060年
高齢社会白書2012(内閣府)より
他の予測では、2100年までには日本の人口は5000万人を割り込むとさている。
安倍政権下では出生率が更に減少するという短期的政策の失敗が統計に表れており、状況は著しく悪化している

 核攻撃直後、秋田市の人口は社会減を含めて15万人前後、最悪で10万人以下に減少し、その後も人口回復は順調には進まないでしょう。一時的に数万人程度の人口回復はあるでしょうが、その後は地方経済の縮小に伴い、人口は減少に転じることになります。  残念ながら、都市、地域の再生はきわめて困難というよりも不可能と言うほかありません。
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秋田市はこのような未来を背負う必要はあるのか?
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*イージス・アショア関連の過去21回分の記事については以下参照。

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