香港200万人デモの実相。一夜だけの解放区<大袈裟太郎的香港最前線ルポ5>

16日香港デモ

16日香港デモ

意外なほどに明るい雰囲気だったデモ出発地点

 16日香港ヴィクトリアパーク午後。デモに集う人々は想いのほか平和的だった。家族みんなで来ていたり、カップル、ベビーカーの親子もいた。あらゆる世代あらゆる属性の人々が笑顔でそこに集っていた。  あまり明確に触れられることがないので、ここでデモ行進と立法会包囲(オキュパイド)の層の違いを整理しておこう。  どちらも黒で統一されているためわかりずらいが、微妙な線引きを現場では感じる。  6月9日の100万人デモ行進に集ったのは、香港市民全世代。  その夜に警官隊と衝突したのが、若者中心のアクション。  6月12日に立法会を包囲し催涙ガスなどで排除されたのが若者中心のアクション。  6月16日、この日のデモ行進に集まったのはまた、香港市民全世代。そして夜に行動を起こすのは若者たち。  デモ行進と直接行動の違いはかなりの日本人に共有されていない、と沖縄でもいつも思っている。それほど、日本人は政治参加についてもはや忘れてしまっているのかもしれない。  デモ行進の出発前は、親子連れがサッカーに興じるなど、驚くほどにほのぼのしていた。数の力もあるのだろうか、自己肯定感に溢れているように感じた。  13時半だったか、デモ隊が出発してからも、出発地点のヴィクトリアパークに向かう人が絶えなかった。一度デモのメインストリームの中に入ってしまうと、ほぼ自由に動くことができなくなるので、途中のショッピングモールや裏道を走りながら、デモ隊の全体像を追いかけた。  しかし、横の道に出てもそこも逆の流れの黒い群衆で埋まっていた。もう、街中の人々が黒い格好をしている。  幻というか、現実味のない詩的な光景だった。そして皆、不釣り合いなぐらいにピースフルだった。僕がメディアだとわかると、見通しの良い場所を譲ってくれたりした。

200万人デモの起爆剤となった青年の死

 切迫した状況ではあるものの、群衆はやはりポジティブなパワーに満ちていたように思う。人々の笑顔が地平線の向こうまで埋め尽くしているのを見た。もちろん肚の底には大きな怒りがあるのだが、それを前向きに変える冷静さを持っている人々だった。  彼らの手には白い花があった。昨日亡くなった方の転落した場所へ供える花だ。この200万人デモの起爆剤になったのは、間違いなく彼の死だったのではないだろうか。
15日に転落死した方の祭壇

15日に転落死した方の祭壇

腹の底に怒りを抱えつつ、前を向く

腹の底に怒りを抱えつつ、前を向く

白い花を掲げたデモ参加者たち

白い花を掲げたデモ参加者たち

 黒の人々が絶え間なく立法会付近を埋め尽くしてゆく。  もはやスマフォの電波がないほどの人数が集っていて、この日行われた那覇の香港デモに電話をつなぐはずだったが、それも途切れた。
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