香港200万人デモの実相。一夜だけの解放区<大袈裟太郎的香港最前線ルポ5>

「日本もヤバイよね」と日本で働く香港女性は言った

 香港出身で普段、日本で働いているという女性に話しかけられた。 「香港が大変だ、デモに行きたいと職場で言ったら、会社の人たちがすぐ帰りなさいと休みをくれた」 「こっちでは記者も殴られるから気をつけてね」  明るく振る舞う彼女だったが、握手する手がとても震えていた。  皆、そうなのかもしれない。明るく平和的に振舞っても、心の奥底には大きな恐怖が蠢いていた。 「日本も今やばいよね」  去り際の彼女の言葉が胸に刺さっている。  今日のデモに200万人が参加したことを知ったのはその頃だったか。  とにかく先週の数を超えたことに歓喜したが、これから先のことはまだまだ読めない状態だった。
200万人を集めたデモ

200万人を集めたデモ

200万人を集めたデモ

200万人を集めたデモ

200万人を集めたデモ

200万人を集めたデモ

11秒の動画も、世界を変えることができる

 LEEJの撮った11秒の動画がこの日から50万回以上再生された。  群衆の圧倒的なボリューム感が見事に撮影されていると思う。  このデモの裏で、行政長官、林鄭月娥は深圳で中国の高官と会談し、今後の身の振り方を話し合っていたようだ。 「政府の対応が不十分だったために、香港社会に大きな矛盾と争いを生み、多くの市民に失望と悲しみを与えたことに行政長官として市民におわびする」  結果として彼女は謝罪に至った。  圧倒的な数のデモ隊が政治を動かしたことは間違いない。  デモには意味があるのだ。 「この動画、中国政府も見ただろな。おれらもう中国は入れないかもな、笑」  LEEJとそんな冗談を言って称え合った。  たった11秒が世界を変える種になる。この日、僕らはジャーナリズムの持つ力を意義を実感し、確信することとなった。  普久原朝日の動画もまた、光をかざす人々の前向きさをとらえていた。
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増える群衆はうねりとなり、不安もまた増していく
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