立法会の警察は数名だけになっていた
立法会に戻ると混沌は加速していた。
「終電の後に香港警察の排除が始まる」
一部のマスコミたちがそうささやき始め、現場に緊張が走る。僕はガスマスクとゴーグル、ヘルメットを装備し、GOPRをセットした。
立法会周辺はすでに黒の若者たちが完全に占拠していた。だらだらとコンクリートに寝そべる者、音楽をかける者、談笑する者。彼らは不思議と楽しそうだった。
誰にも指図されず、自由を謳歌する、活き活きとした無垢な魂たち。それは若者たちだけの新しい国のように見えた。緊張感と無邪気さ、そして個人による自治。一夜だけの幻の解放区だった。
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立法会周辺の若者たち
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立法会周辺の若者たち
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立法会周辺の若者たち
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立法会周辺の若者たち
終電が過ぎて、午前3時が過ぎても、まだ警察の排除はなかった。立法会裏手には、バリケードを構築している集団もいた。それを眺めながら、僕もコンクリートの上で眠った。あの冷たさと固さ、これこそが最前線だ。
朝8時過ぎだっただろうか、若者たちが慌ただしく動き始めた。
「奴らが来る。気をつけろ」
ガスマスクで完全に防御した青年にそう言われた。
裏手から、武装した警官隊が列をなしてバリケードを突破した。腰には銃があった。市民が数時間かけて作ったバリケードも警察の手にかかれば、ものの数分で破られることを知った。
しかし、若者たちの姿がない。困惑しながら正面に走ると、そちらでは数百名の非武装の警官が市民と対峙していた。
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警官隊と対峙する市民
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市民と対峙する警官
香港警察は一応、表面上、市民との対話を求めてきたのだ。
固唾を飲んでカメラのシャッターを切った。
一触即発とはまさにこのことだろう。その場にいる全員の鼓動が聞こえるようだった。
市民と警察の代表者が対峙し、車座になって交渉が行われた。
市民側の交渉人
香港警察側の交渉人
僕はその真ん中になぜが陣取っていた。
不謹慎かもしれないが、今まで見たどんなフリースタイルバトルより熱くタフなものだった。あたりまえだ。
広東語がわからないので、市民たちが沸いたり、ブーイングしたりするその表情から、必死で現状を読み取った。
警察側の交渉人の女性が何か言った後、市民たちが沸いた。
どした?と思っていると、警察隊がいっせいに踵を返して去っていく。
市民たちは手を叩き、うねるような拍手喝采だった。まるでサッカーW杯で香港が優勝したかのような歓喜だった。
理由がわからないが、どうやら市民たちは非暴力で立法会を再び取り戻したのだった。