若者たちに「なぜ警察は帰ったのか?」と聞くと「きみらみたいな外国からのメディアがたくさんきてくれたから、香港警察はこれ以上のイメージダウンを避けたのさ!」と握手してきた。
ハグを求めてくる若者もいた。
まじか、、、その朝、僕は人生で味わった事がないほど、たくさんの人々に誉められた気がする。
いや、2016年名護に墜落したオスプレイに近づき、写真を撮った時も、沖縄のおばあ様おじい様たちに抱きしめられた。
あの時と同じだ。おれたちのカメラは、時に国家が隠す事実を世界にさらし、踏みつけられている人々を解放する手助けができる。
前名護市長、稲嶺進さんの顔が香港の空に浮かんだ。
「一隅を照らす」
それが進さんの座右の銘だ。
それは自分の中でヒップホップの概念にも結びついていた。
これからも自分なりのやり方で社会の片隅を照らし続けることを、香港の空に約束した。
香港市民たちは非暴力で立法会を取り返し、さらに謝罪と法案の延期を掴み取った。
その朝の眠そうでいて、誇らしい若者たちの顔を、僕は忘れる事ができない。
短期集中連載:大袈裟太郎的香港最前線ルポ5
<取材・写真・文/ラッパー 大袈裟太郎>
おおげさたろう●1982年生まれ。本名、猪股東吾。リアルタイムドキュメンタリスト/現代記録作家。ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り「フェイクニュース」の時代にあらがう。2020年6月よりBLM取材のため渡米。
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