写真はイメージです。
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連載第4回」までに中学校武道必修化の費用総額が最大限では2500億円に及ぶことを解明しましたが、今回は武道授業の費用対効果について考察します。
私は武道必修化に反対なのではなく、武道がハコモノ行政と結びついて巨額の費用を伴って遂行されている現状を憂いているのですが、ハコモノ行政の最大の問題点は、多額の費用が投下されながらも、そこから得られる便益がきちんと分析されないまま放置されがちなことにあります。1棟4500万円をかけて作られた武道場で、費用に見合った授業がきちんと行われているのでしょうか。
私は作ったはいいけど使われていない武道場が全国に多数存在しているのではないかという疑問を持っています。特に総合武道場(柔剣道場)では、柔道か剣道のどちらかしか行われていないという状況は日常茶飯事なのではないかと思います。何故なら、「
連載第2回」で書いた通り、授業でどの武道を選択するかに関わらず建てられるのは大部分が柔剣道場ですので、柔道を選択した学校では剣道場、剣道を選択した学校では柔道場を使わないという事態が当然発生すると思われるからです。武道授業での複数種目実施率(同一校で柔道と剣道の両方を履修するなどの比率)は6%程度しかありません(月刊武道 2015年12月号)ので、どちらかの道場を使わないというケースが発生するのは必然です。
特に授業で剣道を選択した中学校では、本来なら体育館で実施可能な剣道授業が、わざわざ4500万円もかけて建てられた総合武道場の剣道場部分で行われているということになります。一方、柔道場部分は使われずに放置されることとなります。