安全的見地のみから「受け身だけでいい」「寝技だけでいい」「礼儀と教えだけでいい」など極端に偏ったことを言う柔道指導者の授業に4万円の価値があるとは到底思えません。文部科学省は「武道は触れてみて良さがはじめて分かる」(毎日新聞 2007年9月5日付)と呑気な事を言っていますが、現在の指導内容のままでは「かえって武道嫌いが増える」と懸念する声すら上がっています。
受け身だけでは単調でつまらないでしょうし、寝技だけでは身体的接触が多いので、特に女子は嫌悪感を示すでしょう。寝技だけを指導する中学が18.8%、寝技を学んでから投げ技を学ぶ中学が60.8%もある(本村清人他 2015年3月)とのことですが、そもそも寝技偏重の柔道は嘉納治五郎の教えに反します。礼儀と教えだけとは何をかいわんやで、そんなものが楽しいわけがありません。
ちなみに、スポーツ庁が武道の指導成果の検証のために生徒に行ったアンケート調査で、「武道の授業は好きですか」という質問をしたところ、肯定的な回答(そう思う、だいたいそう思う)は柔道60%、剣道54%、相撲52%と低い比率に止まりました(月刊武道 2016年4月号)。この割合を7~8割へと上げていかない限り、武道授業の成功は覚束ないでしょう。