日本では、イージス・アショア配備は「アヒルのお座り」
さて、日本のイージス・アショアは、陸上固定基地であるという致命的弱点から、萩配備は
通常弾頭KN-23SRBMによって、せいぜい5分程度で蜂の巣にされ、秋田配備は
先制核攻撃により10分以内に蒸発するため、
何の役にも立たないことは本連載で1年あまりにわたって再三再四指摘してきたことです。そのような代物に合衆国が自らの将兵を配置するわけがなく、
日本の資金で配備し、日本国内に配備し、日本人に運営させるのは当然のことです。
例え役に立たなくても、千億円台後半から1兆円を超えるお金が合衆国の軍需産業に流れ込みますし、ハワイ、グァム防衛に僅かでも役に立てば棚からぼた餅です。そもそも早期警戒情報が日本から得られれば、SBD(洋上配備弾道弾防衛)などの合衆国防空システムに多少なりとも役には立ちます。あとは日本市民や将兵が吹き飛ばされても蒸発しても何ら問題ありません。これが外交にあらざる「
安倍社交」の成果です。対露安倍社交でも、日本はあらゆるものを失う寸前です。
では
欧州配備イージス・アショアはどうなのでしょうか。こちらは
合衆国の資金で建設され、合衆国将兵が運営します。理由は、
十二分な縦深性にあります。結果、十数分の反応時間とトルコなどに展開する前方展開Xバンドレーダーの助けにより、ミッドコース迎撃とターミナルフェーズ迎撃によって自分自身を守り、想定される欧州旧西側を守ることが可能です。これならば合衆国自らの手で配備、運営する価値があります。
但し、私にはイランが合衆国や旧西欧諸国を核攻撃する理由が全く分かりません。ロシアが、欧州イージス・アショアを弾道弾防衛に偽装した対露巡航ミサイル基地(INF全廃条約違反)であると批判してきている理由の一つです。
日本の場合、射点からの距離が近すぎるために反応時間がたいへんに短くなります。むつみ演習場の場合、KN-23に対し手も足も出ず、一方的に蜂の巣にされます。新屋の場合、日本海にMDイージス艦を展開していれば生き残るかもしれませんが、完全に本末転倒です。
まさにこの縦深性の欠如が、陸上固定基地であるが故の狙い撃ちを確実とし、日本では、MDイージス陸上配備=イージス・アショア配備は
「アヒルのお座り」となるわけです。
イランからの大圏軌道(弾道弾軌道)と等距離円
等距離円は500km刻み
ルーマニアの欧州イージスアショア(デベセル陸軍基地)は、射点から2500km以上離れており、十二分な縦深性がある。
※沼津高専 ウェブ地図で等距圏・方位線を表示する (Leaflet版)を使用
(注意)
円のゆがみは、地図がメルカトル図法だからである。500kmからすでに僅かにゆがみが見られる。大縮尺のメルカトル図法地図に直線や1000km単位の円周を書いてはならないこと、地図上で図を回転させてはならないことがよく分かる
さらにこれはとくに秋田市新屋のイージス・アショアで顕著なのですが、人口密集地とあまりにも接近しすぎています。Google Earthの衛星写真で、概ね同縮尺で
ルーマニア、デベセル基地と
陸上自衛隊新屋演習場を比較してみましょう。(※配信先によっては埋め込んだ画像が見られない場合がございますので、その場合は本体サイトでご確認ください)
ルーマニアのデベセル基地は、広大な農地のど真ん中にあって、人家は小さな集落が
2.5〜3km離れた地点に存在します。一方で新屋演習場は、
秋田県庁から2.5km程度、住宅街からは500m程度しか離れていません。
これでは平時における
強烈な電波放射による民生活動への悪影響や住民の健康への影響が憂慮されます*。そして何より、北朝鮮にとっての対合衆国核抑止力への最大の障害となりますので、先制奇襲核攻撃の最優先の目標となりますから、秋田市民は考え得る限り最も無残な事になり得ます**。
<*筆者は、電波輻射による人体への影響を殆ど気にしない為、家人から電磁波人間だのビリビリマンとまで言われたが、流石に秋田での位置関係はあり得ないと考えている>
<**筆者は、50kt四発程度の地表、上空爆発を想定している。広島への核攻撃が10〜15ktの上空爆発。もちろん、故障や迎撃による無能力化を想定した数字だが、うち一発でも秋田市は大部分が消滅することになる。とくに地表爆発の場合、残留放射能により復興は不可能となろう>
いくら自民党員の政治家であっても、このような危険を内包する安倍社交に市民を差し出すことは恥知らずと言うほかありません。
今回までの16回にかけてイージス・アショアは、単なる安倍社交と合衆国軍産複合体のお金儲けのためだけの代物で、軍事上も外交上も殆ど無意味であり且つ、日本人から千億単位ないし兆単位のお金を搾り取り、その対価として日本が先制核攻撃の対象となる愚劣な代物であると厳しく指摘しました。
それだけでも酷い代物ですが、日本イージ・スアショア配備は、日本の外交上も致命的な打撃となる恐れがあります。
次回は、その点を論説した上でひとまずの結びとします。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』ミサイル防衛とイージス・アショア16
※なお、本記事は配信先によっては参照先のリンクが機能しない場合もございますので、その場合はHBOL本体サイトにて御覧ください。本サイト欄外には過去15回分のリンクもまとまっております。
<文/牧田寛>