こちらが本家のザッハートルテ。噛むと砂糖がじゃりっという甘さ。無糖のホイップたっぷり添えていただきます。なんというか「ご褒美」という言葉がぴったりのケーキだと思います
前々回の日記の最後に書いた血液検査と尿検査の結果があがってきました。そして、それを査読したGP(かかりつけ医――エリアごとにいる総合診療所のドクター。緊急の場合を除いて病院へ行く前まずここで診てもらい予約指示を受ける)から電話。ふだんなら出向くところですが、いまはまだワクチン接種以外に診療所はほとんど使われていません。
ともあれロックダウン生活で露骨に太ってしまっていたし、あらかじめ悪い予感しかありませんでしたが結果は案ずるより産むが易し。ほっと一息。
しかし、けっこうな注意は受けました。もっと血糖値を下げなきゃダメ。もっと運動によるエネルギー消化をしなきゃダメ。もっと体重を落とさなきゃダメ。なぜなら糖尿の薬のせいで腎臓にタンパクが下りだしているので投薬量を減らさなきゃいけないから。……という内容。ダイエットは9月までに5キロ! の指示が出ました。まあ、なんとかなるでしょう。
ウィーンの
ザッハーホテルから旅籠の名を冠した名代のチョコレートケーキをツレの誕生日を言い訳に注文しても大丈夫なはず。何の根拠もありませんが、コロナ禍が収まるまでのサービスらしいので頼まないと帳面が合いません。
ザッハートルテは大変に有名なお菓子ですから日本にも美味しいものがいっぱいあります。もしかしたら本家を越えた味も見つかるかもしれません。しかし、それらは決して同じではない。本物志向たらいうもんでもない。こういうものは嗜好品ですから「美味」より「本物」であることよりも大切ななにかがあるのです。それは「豊かさ」といってもいいかもしれません。
ましてやロックダウンで不自由している世界中のファンの皆さんに送料無料でお届けしよう! なんていう心意気をみせられたら、そりゃあポチらないわけにはいきません。それまで節制して臨みます。
距離を取りつつ多くの人が楽しめる工夫が伺える。お喋りは控えめ。このシステムならクラスタは発生しない。家仕事に切り替えた人が増えた分公園エクソサイズがブームになっている
しかし体重の増加はわたしに限らずコロナ禍における一般的な悩みではあるようですね。英国では48%の人が「太った!」と自己申告しています。
ロックダウンと肥満の因果関係については昨年の封鎖時、4月から5月にかけての調査結果を国立バイオテクノロジー情報センター(NCBL=National Center for Biotechnology Information)がに詳しく
レポートにまとめて今年頭に発表しています。かなり面白い内容なのでご一読をお勧め。
もちろん検索すれば〝コロナと肥満〟についての類似記事はたくさんみつかります。が、これはメンタルヘルスとの関係に深く踏み込んでいるのが特徴。生きるか死ぬか、死なないまでも悶え苦しむかみたいな状況にあると、どうでもいいことみたいに感じますが実はかなりのダメージを受けているのが解ります。ただダイエットとか美的な問題ではないのです。
拙著『
英国ロックダウン100日日記』(本の雑誌社)には執拗に、むしろ普段より「ちゃんとしたものを食べよう」という意識が漲(みなぎ)っています。このときはもちろんこんなレポートが書かれるなんて思いも寄らなかったし、それほどまでに心理学、精神衛生学的な危惧をはらんでいるとも考えていなかったのですが本能で危機を察知していたのかもしれません。
わたしの場合はストレス解消のための糖分接触過多と運動不足によるデブりですが、どうやら大多数の肥大化組はレンチンやスナックが中心の食生活を送ってしまった人がメインのようです。暇があると食べてしまう癖がついてしまったり、美味しいものにしか幸福を感じられなくなったり。厭世観、絶望感から身体にいいものを摂ろうという意欲がなくなったり……。
ほとんどスポーツというものをしない、見ない、興味もないわたしは、どうして緩和の項目にジムやプール、運動施設の再開が早い段階で織り込まれるのか不思議で仕方がなかったのですが、どうやら運動という行為がかなりコロナ禍の対策として重要な役割を担うからだとこのレポートを一読理解しました。
そういえば公園を通りすがっても前回のロックダウン以上にスポーツに興じる人々の姿がたくさん観察されます。何面かあるバスケットコートのひとつが潰されて、より多くの参加者が体を動かせるズンバのクラスになっていたり。芝生の上で輪になって太極拳をしていたり。フリーの企画も多いようです。