コロナ禍コロちゃんのデイジー。機嫌のよい子にすくすく成長中だが、パパはレストランのマネージャーなので、次の緩和で仕事が始まったら困ったことになるかもと心配されている
もしかしたら人間の病気がなんとかなってきたからかもしれませんがメディアのコロナ関連ニュースもディテールが膾炙(かいしゃ)されるようになってきました。今週とりわけ考えさせられたのが
ガーディアン紙の「パンデミックパピー pandemic puppies」についての記事。
BBCでもそれをベースにした同内容のニュースをやっています。
パンデミックパピーとは意訳すると「コロナ禍コロちゃん」みたいなニュアンスでしょうか。ロックダウンの無聊(ぶりょう)を託(かこ)つために仔犬を飼う人たちが増えた話は前述した著書にも書きました。犬を買う心構え、犬と暮らす覚悟のない人たちのせいで悲劇が起こるのではないかと私はずっと懸念していましたが予想外の形で静かなトラブルが英国に起こり始めています。
イタリアやフランスではホリデーシーズンになると長期バカンスの〝アクセサリー〟として仔犬を買って連れ歩くバカ親やバカ娘がいまだに根絶されません。夏の終わりと同時に捨てられるリゾートドッグの問題に対処する法規制が長年求められています。わたしが心配していたのは、そんなロックダウン明けのコロナドッグの誕生でした。
あにはからんや異様な愛犬家の多い英国ではみんながコロちゃんを目の中に入れても痛くない勢いで可愛がった結果、緩和後に完成したのは過度に甘やかされたSpoiled Dog だったのです。
前回、ソーシャライジングする犬たちの微笑ましい風景を紹介しましたが コロナ禍コロちゃんは本来ならもっと早く経験すべき他犬との付き合いも知らず、ただただ飼い主の愛情を四六時中受けて育ちます。ところがロックダウン緩和によってパパやママが会社へ行くようになってしまった。「捨てられた」と思い込んで精神的に不安定になっているというのです。
設備の整ったドッグシッター施設は大賑わいだとニュースは伝えていましたが、それがどこにでもあるわけではありません。コロナ禍コロちゃん問題は存外根が深いのです。冒頭に書いた肥満問題にも通じるニューノーマル社会の歪みです。
◆入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns【再封鎖15週目】4/16-23
<文・写真/入江敦彦>