その前提から米朝関係を検討すると、2016年に数度に上る試射をしたIRBM(準中距離弾道弾)である火星10号(ムスダン)*の実戦配備が進みつつあり、2017年7月4日(合衆国独立記念日)と7月28日には、ICBM(大陸間弾道弾)である火星14号**の試射が成功していました。
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Musudan – Missile Defense Advocacy Alliance>
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Hwasong-14/KN-20 – Missile Defense Advocacy Alliance、
【北ミサイル】北「ICBM発射成功」 高度2800キロ、40分飛行 EEZ着水、日米韓を牽制2017/07/04産経新聞>
このほか様々な条件を勘案して、日本配備イージス・アショアは、合衆国防衛、即ち、ハワイ、グァム防衛専用ではないかという疑いをきわめて強くしました。そうであれば、配備場所は自ずと推測できます。
そして
2017/11/16に安倍自公政権は、イージス・アショアを萩市むつみ演習場と秋田市新屋(あらや)演習場に配備することを内示し、地元与党議員への協力を要請していたことが報じられました*。まさに予想通り、
市民を合衆国の人身御供として差し出したわけです。さすがに安倍晋三氏の地元である山口県を差し出すとは思ってもいませんでした。
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陸上イージス配備、秋田市・萩市で調整 政府、陸自演習場に2017/11/16朝日新聞>
「安倍社交」のためには自らの地元県も合衆国の利益へと生け贄に差し出す。流石に想定外でした。
筆者が2017/12/12に公表した萩・秋田配備イージス・アショアと、迎撃対象の火星14号と火星10号(ムスダン)の軌道
射点をピョンヤン周辺から西海衛星発射場(東倉里)に移している
※筆者ツイートより
ここまでの推測において私は、ミッドコース迎撃システムが必要とする縦深性を大きく過大評価していましたが、一方で秋田と萩では、
最も重要な防衛対象である大阪、名古屋、東京を狙う弾道弾との角速度が非常に大きくなる側方迎撃であることには変わりがなく、
弾道弾防衛には最悪の立地であることは変わりありません。その一方で、
ハワイ、グァム防衛には絶好の立地であり、
合衆国防衛専用兵器であることに変わりはありません。
そもそも日本は
MDイージス艦8隻態勢が完成目前であり、しかもそのすべてが「最新鋭」のMDイージスシステムにアップデート可能で、実際にアップデートが進んでいます。ここに日本防空にとっては、最悪の立地でありかつ、陸上固定基地であるが故に最優先の先制攻撃の対象となるイージスアショアを配備することは、無意味な二重投資でお金の無駄*ですし、そもそもSM-3とPAC-3の守備範囲同士の隙間が放置されてしまいます。そして何より配備先の市民の生命を核攻撃の危険に晒すことになります。
<*当初、一基800億円なので1000億円のTHAADより安いという政府、自民党による触れ込みだったが、二年もたたずに運用費込みで6000億円を超過し、1兆円超えもほぼ確実である。しかも先制核攻撃を誘引するだけで、日本には何の役にも立たない>
まさに日本は、中曽根康弘氏のいった
「不沈空母」から、使い捨ての「巨大駆逐艦」になったわけです。事実、自民党と政府と密接な関係にあるとされる合衆国のCSIS(戦略国際問題研究所)による”
Shield of the Pacific: Japan as a Giant Aegis Destroyer, Thomas Karako, CSIS, May 23, 2018” という2018/05/23発表には、そのものズバリ、「
日本を太平洋に浮かぶ巨大イージス駆逐艦とし、ハワイ、グァム、西海岸といった弾道弾防御の手薄な地域の防御を鉄壁となす。日本にイージス・アショアを買わせることで、合衆国は10億ドル(1000億円)を節約出来る。」と明記してあります。
「情けない」、「無残だ」という言葉しかありません。