「誰がためのイージス・アショアか?」配備地から導き出される、ある推論

牧田寛
ルーマニアのイージス・アショア

ルーマニアのイージス・アショア photo by U.S. Army Corps of Engineers Europe District via flickr(CC BY 2.0)

誰がためのイージス・アショアなのか

 現在の日本の弾道弾防衛の問題点は、大きくは次の4点が挙げられます。

1)自前の早期警戒衛星が存在せず、合衆国依存。
2)ミッドコース迎撃を担当するSM-3Blk IAミサイルの不足。
3)ターミナルフェーズ迎撃を担当するPAC-3が点の防御である。
4)イージス艦の弾道弾迎撃パトロールが恒常化することによる護衛艦隊の運用への影響。

 これらには、次の解が考えられます。

1)現状維持。自前の早期警戒衛星を開発、運用すると、核疑惑、核軍拡競争の発端となりかねない。
2) SM-3Blk IA/Bミサイルの数を現状の32発から例として320発へと大幅に増やす。
3-1) ターミナルフェーズ防御を面にするか、点にするかを明確にする。
3-2)その上で、面の防御を行うのならTHAADを導入する。
3-3)その上で、点の防御なら、無防御領域の市民保護の方策をつくる。
4-1) MDイージス艦のBMD5.0へのアップグレードをすすめ、MDパトロールを1隻態勢とする。
4-2) イージスシステム艦を8隻態勢とし、6隻以上できれば全艦をMD対応とする。

 これらのうち4-1)4-2)は既に調達、配備が進んでいます。2)については、納期の問題はあるでしょうが、すぐに予算措置に移れることです。3-1)については、MDのあり方、外交のあり方の根本に関わる為に議会での真剣な議論が求められることです。3-2)はその後で行うべきことです。3-3)はきわめて歪な形で防空演習が行われ、耐ミサイルシェルターを造ると言う発言まで自民党から飛び出しました。全くの思いつきで理念がありません。だから、既にプロパガンダであったと厳しく糾弾されている、1952年のDuck and Coverを今ごろになって被爆国で再現するのです。

亀のバート君

図5-1 亀のバート君 1950年代の民間防衛プロパガンダ映画Duck and Coverより(現代では否定されている人類負の遺産)

 ところが現実には、2)3-1)を飛ばし、4-1)4-2)についてもそれが進んでいることの明確な説明もなく3-2)THAAD導入の検討が独走し、そのうえTHAADとは役割が異なるイージス・アショアが、議会での禄な検討もなく「安いから」という理由で(実際は安くもないのに)進めめられています。

 ハードウェアに依存した戦略・戦術は砂上の楼閣のようなものですが、そのハードウェア自体が日本のミサイル防衛に費用相応に役に立つかは怪しいもので、そのうえ費用も売り手の言い値で鰻登りに急騰してしまい。「安いから」という理由は、1年も持たず破綻しました。

 なぜ、このような理屈の合わないことをするのでしょうか。行動には必ずその理由があります。その理由を考えます。

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日本の本土防衛には不的確な秋田と荻

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