無論、これらは私の考えです。近未来軍事SFと言ってもよいです。実際には合衆国が何を考えているかは分かりません。ただし、海自が近い将来的に一隻でのパトロールで十分な
BMD5.0 MDイージス艦を既に6隻調達していながら、唐突にイージス艦が忙しいからと言う理由で
日本の弾道弾防衛には不確実性の大きな場所に、
きわめて高額かつ配備に時間がかかり、仕様そのものが適切と言えないイージス・アショアを二基も配備する合理的な理由は全く見出せません。そしてその場所と兵器が、合衆国ミサイル防衛にきわめて好適となれば、疑わざるを得ないのです。むしろ、近未来軍事SF*の題材になるようなことが現実に起きていることが脅威です。
もしもそうならば、配備するなら合衆国のお金で配備すればよいですし、また新基地建設との引き換えに、沖縄の基地を幾つか返還して欲しいものです。普天間とか、辺野古とか、返還候補地は幾らでもあります。これが相互主義と言うものです。
しかし、イージス・アショアに限り、それでも駄目だと言う理由があります。
本稿続きます。次回は、お金を積まれてもイージス・アショアお断りの理由です。
*ただし、既に日経新聞ではこのシナリオについてグァム攻撃を題材に掲載している。(参照:
自衛隊、未知の領域に 安保関連法施行 2016/3/28 18:00 (2016/3/30 14:45更新) 日本経済新聞)
*また、核問題に関連した情報集約サイト「核情報」でもSM-3 Blk Iを前提にブーストフェイズ迎撃、ポスト・ブーストフェーズ(上昇段階)迎撃について懐疑的に論評している。イージス・アショアは、SM-3 Blk IIを装備する。SM-3 Blk IIの迎撃兵器としての能力は、Blk Iに比してきわめて高いものとなっている。(参照:
米国に向けたミサイルを日本のミサイル防衛システムで迎撃?永田町の都市伝説2)
*イージス・アショアがTHAADに比して高価であると言う事実が明らかになるにつれて、イージス・アショアはMDイージス艦に比べ安いと言う釈明がはじまっている。イージス・アショアは脆弱な固定地上基地で、弾道ミサイル防衛以外には使い道がないが、MDイージス艦は、汎用性、隠密性、抗堪性(こうたんせい=攻撃を受けたときに被害を抑えて機能を維持する性能のこと)、機動性、生残性にきわめて優れる為、比較すること自体が完全に誤っている。このような
詐術的便法が次々に現れることには厳に警戒すべきである。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』第5回
※読者の皆様から頂いた質問にコロラド博士が答える
FAQが牧田氏のFBに開設されました。
<文/牧田寛 Twitter ID:
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USMDA via flickr(CC BY 2.0)>
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガを近日配信開始予定