昨今のビジネスシーンではスピードが求められている。そんななか、DIDは人間性や意識改革へのアプローチであり、それは遠回りのように思える。それがなぜ注目されているのか?
「これまで、企業は生産性を上げるために、工場のラインを効率化するなど、主眼をハードウェアに置いていました。しかし、現在の社会はリスク要素が変化しており、人材の流動化や世代差によって、企業内におけるコミュニケーションや価値観の断絶が起こりやすくなっているのです。いわゆるコミュニケーションロスによる生産性の低下です。企業の上層部もこれらを認識しており、解消手段の一つがDIDなのでしょう。
対話を促進することが、チームのパフォーマンスに影響することも注目されています」
1999年、日本初開催を体験した脳科学者・茂木健一郎氏はDIDのよき理解者だ。いま、脳科学者の研究でチームワークに関するわかりやすい実験例がある。次のように特性の異なる3つのチームを作り、課題をこなすというものだ。
チームA:知能指数が高い人で構成したチーム
チームB:業界に精通した人で構成したチーム
チームC:対話しながらお互いを気づかえる人で構成されたチーム
先が予測できず、これまでの成功手法が全く役に立たないいまの状況で、これらのチームに課題を与えてみると、好成績を収めたのはチームCだった。
「各チームに傾向があり、Aチームは、新しいことに取り組む前に『無駄だ』といって辞めてしまう。Bチームは業界の慣習にとらわれて、新しいことができない理由を探してしまいます。Cチームは仲良しだから好成績をおさめたということではなく、状況に合わせてリーダーを変えたり、役割をローテーションするなど、成功のためにフレキシブルに動けたのが強みになったのですね」