多くのゲストにとっては刺激的な時間となるようだが、時には
暗闇の中で企業の“経営状況”があらわれてしまうとか。
「成長している企業は、暗闇研修でもリーダーが固定化せず、局面に合わせてリーダーが入れ替わり、上司も部下も間違いを恐れずに意見を出し合います。一方、停滞している企業は、上司と部下の関係が固定化しており、リーダーは常に上司、各人の意見も誰かに追随するようなシーンが多く見られますね」
また、DIDには幹部向けのプログラムもあるのだが、ここにも興味深い例があった。
とある鉄道事業者の幹部研修で、暗闇内で粘土をこね、全員で電車を作るという作業を行った。一人につき、鉄道車両を一両ずつ作るのだが、できあがってみれば、すべて先頭車両ばかり。客車がなかったのだったとか。
「先頭車両のみでは乗客を乗せることができませんよね。“車両”といったときに、どの部分をイメージするのか。みなさん、部署のトップという立場のためか、当然のように先頭車両だけを思い浮かべてしまい、牽引される側の客車がすっぽり抜け落ちていた。これは衝撃的だったようで、部下・フォロワーの存在意義や接し方を見直すきっかけになったようです」
さらに、
『他者に助けを求めること』の重要性に気づくとか。
「リーダーはとても優秀であり、社内では勝利者ともいえる存在。立場もあるため、他者に助けを求めるのが苦手なのですね。ところが暗闇という非日常空間では、一人の人間として振る舞えるようになる。あるいは、助けを求めなければ、物事が円滑に進まない。それを体験することで、
もっと部下の気持ちを理解したい・気づきたいという実感へとつながっていくようです」
企業幹部にとって耳の痛い結果にも繋がりかねないDIDだが、上層部の人材にはむしろ好評だという。清水建設では、なんと自前の研修施設に暗闇研修ルームを設置し、幹部研修に取り入れているそうだ。