DIDの成果を2つのキーワードで表すなら、ひとつは先に説明した「
チームワーク」。そして、もうひとつは「
イノベーション」だろう。
研修内容は、企業や目的ごとにカスタマイズされているのだが、その内容は興味深い。
たとえば某ドリンクメーカーでは、暗闇で自社製品と競合製品を飲み比べた(視覚情報がない飲み比べでは、赤ワインと白ワインを取り違えることも珍しくないとか!)。
あるいはインフラ系の企業では、二人でチームを組んで、一人は目隠しされ、もう一人が先導役となって、街中を視覚障がい者の立場になって白杖を使いながら、最寄りの駅から会場まで歩いてくるセッションもあるという。
「自分の扱う製品・対象に、視覚を排除してアプローチすることで、新たな気づきを獲得することを狙っています。実際、
視覚障がい者の感性を商品開発に取り込むことで、企業の開発力は上がると考えています」
こうした確信は、スタッフである視覚障がい者とのコミュニケーションから生まれたものだ。
「うちのアテンドたちが言うには『コンビニの前を通ると、目が見えなくても、どのコンビニなのかわかる』そうです。どうやら、それぞれ店舗の匂いが違っているらしい。つまり、匂いをブランドイメージのひとつとして活用できる可能性が示されているわけです。
彼らの感覚を取り入れることによって、健常者への訴求力や機能性も高められる、イノベーションを生み出せるというわけです」