日本の天文衛星「ひとみ」が通信途絶。世界最先端の宇宙望遠鏡に一体何が起きたのか

米軍は「ひとみ」から何かの物体が分離したことを確認

X線天文衛星「ひとみ」の想像図 Photo by JAXA

 さらに悪いことに、JSpOCは「ひとみ」から何らかの5個の物体が分離したことも検知した。発生時刻は通信異常が起こる前の26日10時42分と見積もられている。 「ひとみ」から何かが分離することはありえない。したがって、内部で何かが爆発したり、スペース・デブリが衝突するなどして損傷し、その破片が外れたものと考えられる。  ただこちらも、衛星が自発的に破裂を起こした、つまり内部の燃料タンクやバッテリーなどが破裂した可能性のほうが大きい。アニメや映画では、宇宙船がデブリと衝突して大事故になるシーンが多いが、実際にはデブリはまばらにしか存在しないため衝突する可能性は小さく、こういう事故の場合には、衛星が自発的に何か問題を起こした可能性が真っ先に考えられる。  JAXAでもこの事実は把握しており、「複数の物体を確認したとされる時刻以降に短時間ではあるものの衛星からの電波を受信できたことから、衛星の通信異常との因果関係について確認中」としている。つまり通信異常が起こる原因となった出来事があったから物体が発生したのか、それとも物体が発生するような異常が起こったことがきっかけで、通信異常が起きたのか、その関係性はわかっていない。  地上から「ひとみ」を観測した結果によると、「ひとみ」本体と考えられるひとつの大きな物体しか見えなかったという。ただ、5個の物体は「ひとみ」から分離した直後から、「ひとみ」から離れるように飛んでいったと考えられること、またその物体は地上からは見えないほど小さかったと考えられるため、ひとつしか見えなかったのは不思議なことではない。  より重要なことは、衛星の大部分が残っており、一部の機能は生きている(衛星が完全に木っ端微塵になったわけではない)可能性が高いということである。これは、分解が起きたとされる時刻よりもあとに、衛星から短時間ながら電波を受信できたことからも裏付けられる。  ただ同時に、回転しているらしいことも判明している。これは正常な状態に衛星の姿勢を保つための装置が機能していないということを意味している。
次のページ 
まずは通信の回復が最優先
1
2
3
4
5