日本の天文衛星「ひとみ」が通信途絶。世界最先端の宇宙望遠鏡に一体何が起きたのか

3月26日の夕方に通信異常が発生

X線天文衛星「ひとみ」の想像図。合計4台の望遠鏡を搭載している Photo by JAXA

 JAXAの発表によると、3月26日の16時40分ごろに「ひとみ」からの通信を受信できないことが判明したという。  その後、同日23時39分ごろと、27日1時21分ごろに、短時間ではあるものの衛星からの電波を受信できたが、これは単に電波を受信することができただけで、意味のあるデータをやり取りする通信が行えたわけではない。それでも、衛星が完全に死んだわけではないことを示している。  衛星は地球のまわりを周っているので、地上にあるアンテナでその電波を受信できる時間は限られている。JAXAでは海外に保有するアンテナなども最大限に使い、「ひとみ」との通信回復に向けた努力を続けているが、3月28日現在、音沙汰がない状態が続いている。  JAXAによると、通信異常が起こる直前に衛星から送られてきたデータを解析したところ、太陽電池の発生電力が想定よりも低かったこと、また衛星内部の温度分布が通常と異なる状態を示していること、そして太陽の方角を正常に向いていないことがわかったという。  この3つの事実が示しているのは、衛星の姿勢が乱れている、ということである。「ひとみ」は宇宙にぷかぷかと浮いているわけではなく、太陽光が当たる角度や、観測したい天体の方向を考え、姿勢を精密に制御することができる。とくに太陽光が当たる角度は重要で、衛星の電力を作り出す太陽電池は、太陽光が当たらなければ意味がないし、また衛星のある面にばかり光が当たり続けると、その部分が壊れることもある。  現時点では、なぜ姿勢が乱れているのか、通信異常との因果関係などといったことはわかっていない。
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「ひとみ」の軌道高度が若干落ちていることが判明
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