日本の天文衛星「ひとみ」が通信途絶。世界最先端の宇宙望遠鏡に一体何が起きたのか

「ひとみ」の軌道高度が若干落ちていることが判明

X線天文衛星「ひとみ」の想像図 Photo by JAXA

 この通信異常の発生とほぼ同時期に、JAXAや米戦略軍統合宇宙運用センター(JSpOC)は、「ひとみ」の軌道高度が少し落ちていることを検知している。  JSpOCは強力なレーダーや望遠鏡を使って、地球の周辺にある人工衛星や、数cm単位のゴミの軌道をくまなく監視している。それらのデータは、一部の軍事衛星を除いてすべて公表されており、衛星の運用者などに通知や警告も行われている。  当初、JAXAの発表では「誤差かもしれない」とされていたが、その後JSpOCの観測によって、実際に高度が下がっていることが確認されている。その下がり方は小さなもので、また下がり続けているわけではないため、このまま地球に墜落するということはない。  ただ、高度の下がった量は小さくとも、その事実は大きい。たとえば衛星から意図せずガスが噴き出した、あるいはスペース・デブリ(宇宙ごみ)が衝突したといった異常が起きたということを示している。しかし、デブリが原因である可能性は小さく、何らかのトラブルで衛星内部から燃料やガスなどが吹き出し、軌道が変わった可能性のほうが大きい。  ただ、これも通信異常との関係性や、時系列についてはわかっていない。
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米軍は「ひとみ」から何かの物体が分離したことを確認
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