開演時間となり最初の出し物である「オープニング 和踊り」が始まる。“こにゅうどうくん音頭”の軽快な音楽が漏れ聴こえてくる。
一向に矢田氏は戻ってこない。「オープニングに関わっていて、終わり次第すぐに来ますのでお待ちください」とS氏。
待たされている間に来賓紹介や来賓挨拶が終わってしまうようでは取材に来た意味がない。撮影すると告げPRESS腕章を巻き客席に向かう。
「撮影はやめてください、観るのはいいですけど」
S氏の声を聴き流し客席の最前列で来賓者をチェックする。来賓として紹介されたのは以下の9人。
・菰野町長 柴田孝之
・三重県議会議員 前野和美(実行委員、2020年7月に日韓トンネル推進三重県民会議および三重県平和大使協議会主催の役員研修会に出席)
・四日市市議会議員 小林博次(実行委員)
・四日市市議会議員 日置記平
・四日市市議会議員 笹井絹予
・衆議院議員 川崎二郎 秘書 かわさきひでと
・参議院議員 吉川有美 秘書 いとうまもる
・一般社団法人100歳理事長 花井錬太郎(実行委員)
・三重県民団顧問 ファン・サントク
イベント実行委員で教団と関係が深い前野和美三重県議会議員
主催者代表実行委員長として元三重県会議長の永田正巳三重県平和大使協議会共同議長が主催者挨拶を行う。
教団フロント団体御用達の元県議会議長・永田正巳三重県平和大使協議会共同議長(左)
来賓挨拶は柴田孝之菰野町長と川崎二郎衆院議員の秘書。柴田町長の挨拶の途中で筆者のもとに駆け付けた矢田氏から、撮影を許可していない段階で勝手に動き回らないよう注意を受けた。今から取材を受け付けるという。
ロビーに戻り、2階奥のソファで矢田氏へ直当て取材を試みる。
撮影については「駄目です」と変わらず。理由を訊くと、撮影しているのは実行委員会としての記録用でケーブルテレビ局はまだ来ていないという
ケーブルテレビ局が来たら撮影許可を出すという矢田氏に、メディアごとの対応が違うことへの異議を唱える。やはり批判的な記事を書いたことが撮影を認めない理由だという。
「それは当然違いますよ。目的が違いますでしょ?」
メディアによって対応が違う以上、他のメディアへ採る措置に合わせると告げる。
「事務局を仰せつかっている」という矢田氏に、なぜ三重県平和大使協議会事務部長の肩書を隠していたのか訊いた。
平和大使協議会と統一教会の関係を知っていたはずではとの追及に、こう矛先を逸らす。
「はい、それは関連と言われると…、フロント団体と言われると組織としては違う。まず統一教会という言葉は今はありません」
2015年に宗教法人名が世界平和統一家庭連合に変わったこと、さらに「“旧”を付けるのは名前が変わってから1年間は猶予期間として」と話すなど、やけに詳しい。
統一教会・家庭連合と平和大使協議会の関係を知った上で関わっているという矢田氏。電話取材の際、なぜその関係性を「存じ上げていない」と言ったのかについて、こう抗弁し「嘘を吐いたとの感覚はない」と主張した。
「お会いしたこともない方と電話だけで全部正直に答えますか?」
公的な資金が投入されるイベントの事務局を担当しているのであれば、全て正直に答えるのは当然だ。以降、電話に出なかった理由を「質問の在り方は、すでにいろんなことを調べておられてそれを前提にしていたから」とした矢田氏は筆者を非難。
「とっても迷惑です。何であんな横やりの記事を書いたのか」
今年、韓国へ行ったという矢田氏は「話す時に、どこまでの範囲にとどめておくかというのがある」と言及、今は関係を隠すつもりはないという。
そこで統一教会本体との関係を尋ねることにした。矢田氏は以前筆者に、ある新宗教の信仰を持っていると話しており、統一教会の信者ではないとの認識だった。しかし今回矢田氏は「親が〇〇教です」とニュアンスを変化させた。改めて矢田氏に統一教会の信仰があるのかストレートに訊くと「個人的な信仰は持ってますよ」と答えるではないか。
「統一教会とか家庭連合を重々よく知っているなら分かると思うが、向かうところは超宗教。いずれ宗教は無くなる。○○教の信仰も持っている」
矢田氏は、統一教会の信者だったのだ。矢田氏が教会員なら話は根底から変わってくる。但し、イベントとの直接の関連についてはこう否定してみせた。
「事務局をやったのは平和大使協議会、100歳大学、地婦連それぞれの役員をしている立場から。信仰は基本的には関係がない」
「教会のイベントではない」と強調する矢田氏は多くの同教団信者がスタッフをしていることについて「コロナ対応で人員がいる」と説明、2世や青年信者のスタッフ動員に関しては「そこまで把握はしていない」という。客としての信者動員については明言を避けた。
「呼んでくださっている方はいるでしょうね」
県や市から改めて確認があった際、統一教会信者だと言わなかった理由はこうだ。
「訊かれてない。関係ないのに」「この行事はそれに全く関係がない。くっつけられることが迷惑」
語気を強め、平和大使協議会としての立場を強調する矢田氏。
「家庭連合の信仰を持っている人が社会活動をしてはダメなんですか!?」
教団との関連を示さず、別の団体名でやっていれば追及されるのは当然だ。現に平和大使協議会が統一教会・家庭連合の関連団体であるとはどこにも明示されていない
自治体が確認してないことは問題だと指摘したところ、矢田氏は驚くべき言葉を発した。最初の段階で、三重県平和大使協議会事務部長の名刺を持って市役所へ補助金の認可申請に行ったというのだ。
「
最初から知ってます。市の方々は」
だとすると市は当初から矢田氏と平和大使協議会の関係を知っていたことになる。なぜ市は平和大使協議会の背景を調べなかったのか。
「知っていたとしても組織が違う」抗弁する矢田氏。
矢田氏によると、筆者が指摘した以外の実行委員にも何人か信者がいるという。
筆者の記事や取材活動を「めっちゃ偏見ですけど、行為自体が」と非難する矢田氏に、どう捉えるかは自由だがこちらも自由に時間まで取材と撮影をさせてもらうと告げ、一旦直当て取材を終えた。
今回のイベントは四日市市から多額の補助金交付を受けて開かれたものだ。四日市市は「市内外に四日市の魅力を発信する」ことを補助金交付の要件にしており、そのような公開事業において撮影を禁じること自体がそもそも矛盾している。
〈参照:
四日市市OFFICIAL WEBSITE|市制施行123周年記念「市民企画イベント補助事業」受付について〉