カラオケおじさんが『オンリー・ユー』に込めた熱い想い
「前奏だけアンプから流します!」(おじさん)
なぜか前奏だけがアンプから流れ、以降はまたたどたどしいアカペラだ。
歌い終えた後、おじさんがマイクを通して語った。
「この『オンリー・ユー』は本来、恋人に歌っているという設定なんですが、いま日本の政治のトップに菅総理大臣がいるような形になっているんではないでしょうか。ただ、
主権者は国民です。
国民がきちんと不正に対して怒らなければ、もう政府は国民をナメきってます。ですからこの『オンリー・ユー』という歌に込めた私の思いとしては、
『オンリー・ユー』のユーは国民なんです。国民だけが、この国の政治を変える主権者であるということを申し上げます」
おじさんのカラオケには、
国民主権への熱い思いが込められていたのだ。
辺りはすっかり暗くなっていた。おじさんが帰ったすぐ後に、官邸から菅首相を乗せた車が出ていった。菅首相はきっと、『オンリー・ユー(国民主権バージョン)』を最後まできっちり聴いてから出発したのだろう。
ひっきりなしに様々な団体や個人が集会やパフォーマンスを見せた、この日の官邸前。ここでは、この国の様々な側面や問題に触れることができる。首相に用がなくても、抗議活動をするつもりがなくても、時間があったら足を運んでみるといいかもしれない。
<取材・文・撮影/藤倉善郎>
ふじくらよしろう●
やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:
@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『
「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)