数値で見る東京都のパンデミック。無策の小池都政と大政翼賛医療デマゴギーの罪

都合の悪い統計は隠しますByブレジネフ東京都知事

 このように、中学生でも計算できる簡単で直感的な指数からも感染症対策の過去と現在と未来を見通すことができます。とても優れた指標です。  ところでグラフに変なことが書いてあります。 「本グラフは、新たなモニタリング項目から除外されたこと、日々公開している陽性者数から算出可能であることから、7月17日をもって削除いたします。」  これは酷い話です。  小池都政は、「東京アラート」では、橋を赤く照らして業者を儲けさせただけで実際にパンデミックの兆候が見えてくると東京アラートを廃止*し基準を変えてしまいました**。更に新たな基準もパンデミックの進行が基準に抵触する度に変更し続け、とうとう数値基準は撤廃、東京都知事の考え次第とし、統計も入れ替え、事態の推移を見ることに最も適した週次陽性者増減比を排除し、消してしまうことにしました***。実のところ、公開されている統計にもあちこちに恣意的な操作がなされており、深刻な問題を抱えていると指摘されています****。 〈*新たなコロナ警戒の目安なし 都が東京アラートの運用終了、軸足は経済に2020/06/13東京新聞〉 〈**感染者増、東京アラート出さない都庁 逆に指標を見直す [新型コロナウイルス]2020/06/15朝日新聞〉 〈***東京都、休業要請の数値基準廃止 感染監視で新指標―新型コロナ2020/06/30時事通信 〈****東京都が発表している陽性者数makirintaro氏のブログrenormalization〉  このように現代史において政治家の失敗や都合で基準や統計を消す前例として極めて有名なのは旧ソ連邦のブレジネフ政権末期、1976年頃から1986年のグラースノスチ開始までです。  旧ソ連邦では、ブレジネフ政権による内政の大失敗によって国は急速に疲弊してゆき、見かけの外交の華々しさに反して、鉄道などのインフラは維持ができず疲弊し事故や故障が相次ぎ、農業生産は低迷、市民の健康状態も悪化、とくに有名な事例では、平均寿命が毎年低下し男性で60歳を割り込むことになりました。この頃になると次々にソ連邦の統計は発表されなくなり、勿論平均寿命も発表されなくなったため、むしろ世界はソ連邦の社会の疲弊を広く知ることになりました*。 〈*『ソ連経済と統計―ゴルバチョフ経済政策の評価』島村史郎編著 東洋経済新報社 1989年8月1日:本書は極めて優れているが、なにより素晴らしいのは、現在の本邦の陥っている隘路を的確に指摘していることである。本邦は、ブレジネフ末期以降のソ連邦と酷似しているというのが牧田の考えである。ただし、ソ連邦の官僚は原簿を死守して後世に残したので、のちに統計の修復や政治犯の第二次大戦前後まで遡っての名誉回復が行われている。この点で本邦と根本的に異なり優れている〉  政治家が、不都合な統計を消す。まさに小池都政です。西新宿の老朽化したツインビル「緑のクレムリン」におわす、「レオニード・小池・ブレジネフ」の名を差し上げましょう。  小池都政のやっていることはブレジネフ末期のソ連邦そっくりで、派手な外交=メディア演出にご執心で、内政は完全に失敗、モスクワオリンピックも無意味なアフガニスタン侵攻で合衆国、カナダ、日本ほか西側諸国の一部、中国、アジア諸国、アフリカと南米の一部諸国によるボイコットで大失敗と、小池都政の模範となっています。但し、ブレジネフ時代のソ連邦でも労働者はアル中になっても餓死はしなかったとされており、その点は本物のブレジネフが圧倒的にマシです。  そのうちマトリョシカ(ロシアの民芸品の入れ子人形、日本の入れ子人形が源流とされる)のなかにおが屑として詰め込まれるかもしれません。
Matryoshka_Russian_politicians

ロシアの歴代国家指導者版マトリョシカ
何故かアンドロポフ氏とチェルネンコ氏が抜けている(どちらも就任後すぐに闘病生活に入り、一年で死んでしまったので欠員扱いとなることが多い)
ブレジネフ時代のソ連邦は、国際社会では絶頂期であり、市民の生活もなんとか維持されていたため庶民からは意外と評価が高い
photo by Brandt Luke Zorn via Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

検査陽性率がみせるマズい兆候

 ここで話を戻して、東京都における検査陽性率を見ます。検査陽性率は、たいへんに重要な指標で、検査が足りているかを判断できます。一般的なサンプリングの考えから、陽性率が10%を超えると検査が不足する「検査負け」の状態であり、検査結果の統計と現実との乖離が大きくなります。また感染症拡大、縮小は、周期的な現象ではありませんので陽性者数の10倍の検査数でも不足で、パンデミックの制圧にほぼ成功したニューヨーク州では、検査陽性率2%未満を維持してきています。検査数が多い=サンプリングレートが高いと言うことは、データの取りこぼしが少なく、感染者の見落としが少ないことを示し、現状把握には重要です*。 〈*デジタルストレージオシロスコープのサンプリング周波数で考えると理解しやすい〉  東京都の検査陽性率は、7日移動平均で5/22の0.8%を最低値に5/23より上昇基調で、6/19に2.1%と2%を超え、ニューヨーク州の上限値目安を超えました。7/10には5.9%となっており、このままでは7月中旬には10%を超える可能性があります。新規感染者数が増加し続ける以上、検査数は増やさねばなりません。  現在、東京都の検査態勢は辛うじて感染者の増加に追従できていますが、新規陽性者数の指数関数的増加が今後も続けば月末には東京だけで2万人/日の検査能力が必要となります。
東京都の検査陽性率(5/13〜)

東京都の検査陽性率(5/13〜)
出典:東京都

 東京都の検査陽性率は、第一次第一波パンデミックでは検査数の不足から4/11には31.7%とたいへんに高い値を示しましたが、5/1には10%迄下がりました。その後5/7から医師会検査が1000件/日を超えて実施され、これにより陽性率は一挙に4.3%迄下がり、5/19〜5/22には、最低値の0.8%を示しました。  そうです。検査を増やせば感染者が増えるのではなく、検査陽性率が下がるのです。検査陽性率が下がればそれだけ統計の信頼性が向上します。東京都は5/22まではたいへんに良好な傾向を示し、パンデミックを制圧できるかに見えましたが、その後の失策によって現在の深刻な状態に陥っています。
東京都の検査陽性率(3/18〜5/14)

東京都の検査陽性率(3/18〜5/14)
出典:東京都

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「検査を増やしたから陽性者が増えた」は悪質エセ医療デマゴギー
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