数値で見る東京都のパンデミック。無策の小池都政と大政翼賛医療デマゴギーの罪

第一次第一波パンデミックではどうだったのか

 3月から4月の第一次第一波パンデミックでは、検査数が現在の1/10未満のため、大量の感染者の取りこぼしがあり、統計の精度はかなり低いものであったと考えられます。そのため現在の統計と数値の直接比較はできませんが、その傾向から学ぶものは多くあります。
第一次第一波パンデミックでの東京都における二ヶ月間の新規陽性者数推移(実線は7日移動平均)

第一次第一波パンデミックでの東京都における二ヶ月間の新規陽性者数推移(実線は7日移動平均)
5/7以降は、医師会検査が多く加わっているため、統計は事実上別物である。従って、数値の直接比較はできない。第一次第一波パンデミックでは、著しい検査過少のために、新規陽性者数は極端に過小評価されていると思われる。
出典:東京都

 第一次第一波パンデミックの時、東京では、4/10の199名をピークに新規陽性者数が減少傾向に転じています(4/10の199名はその背後に検査抑制による莫大な見逃し感染者がいますので、現在の200名とは直接比較はできません)。従って当時の東京では、3/27前後に新規感染者は減少に転じたものと考えて良いです。これは、花見自粛が求められ*、実際に人出が激減した3月最週末に該当します。また3/25には志村けん氏の感染、その後の短時間での重体化が報じられ**、市民に衝撃を与えていました。(諸外国でもトップスター級の著名人がCOVID-19に感染、死亡等すると市民の行動に強い影響をもたらしている。) 〈*都立公園の花見自粛要請 東京都、上野公園など一部通行止めへ2020/03/27産経新聞〉 〈**志村けんさんが新型コロナ感染 重症の肺炎で入院 濃厚接触者は自宅待機2020/03/25毎日新聞〉  従って、市民による自主的な社会的行動制限という介入は、3/26頃から始まり、ウィルスの増殖を大きく抑制していったものと考えられます。残念ながら、当時の検査数は、50人〜250/日程度と現在の1/50〜1/10程度しか無く、統計の精度が著しく低いために精査することは困難ですし、現在の数値との直接の比較はできません。  志村けん氏のCOVID-19発病と入院が報じられて10日後、日本政府は漸く緊急事態宣言をだしましたが、新規感染者数の7日移動平均からは4/24前後から(日々統計では4/19前後から)その効果と考えられるものが現れています。  ここで注意すべきは、自粛や政府による介入が行われても実際にその効果が統計に現れるのは14日後頃ということです。  仮に7/11から自発的社会的行動制限という介入が行われてもそれによって新規感染者数増加の統計が影響を受けるのは7/24頃であり、そこまでは5/23以降の新規感染者数の指数関数的増加から、かなり正確に予測が可能であるということです。そしてその予測は、速やかに大規模な公的介入=社会的行動制限を行わなければ東京都の医療機関は8月にも新型コロナウイルスに圧倒されてしまう可能性があるということを示しています。

実はごく一般的な自然科学・工学的現象

 感染症学の専門家ではない筆者が、ここまで数字を挙げて予測可能なのは、指数関数的増加に乗った以上、SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)への感染者数ほかは、一般的な自然現象、工学的現象と全く同じであるためです。そして勿論、過去2か月間の医師会検査による知見の蓄積が大きく寄与しています。  パンデミックは、筆者にとっては原子炉内でのプルトニウムの増殖と全く同じ扱いができます。東京都が原子炉炉心、人間が核燃料および増殖ブランケット、社会的行動制限を制御棒など、新型コロナウィルスを中性子とすれば、次のような超高性能増殖炉となります。 増殖比(実効再生産数) 1.5〜2.0(もんじゅでは1.1) 増倍時間(倍加時間)7-8日(もんじゅでは10年)  これに気がついたとき、筆者はちょっとシビれてしまいました。筆者は原子炉中の核燃料の挙動で考えますが、他の多くの自然現象、工学的現象とも対比できます。
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現在の増加で国も都も静観しているのは「殺人」にも等しい
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