では、この組織再編によって日本の政治家との関係に変化はあるのか。鄭教区長の講話には以下の発言がある。
「天の父母様聖会の宣布で、天の父母様聖会の名前の下で、家庭連合、UPF、女性連合、青年連合、議員連合などなど全てがこの天の父母様聖会の傘の下に入るようになりました」
教団は
2017年11月に参議院議員会館特別会議室で世界平和国会議員連合の日本創設大会を開催している。この大会に出席した閣僚を含む63人の国会議員及び秘書を代理出席させた残り約40人余りの国会議員も『天の父母様聖会・世界平和国会議員連合』のメンバーとしてカウントされることになる。
〈参照:
統一教会創設の議員連合創設大会に国会議員63人が参加|HBOL〉
各摂理機関が天の父母様聖会に包括されることにより、これまで親密だった保守系の政治家が統一教会や系列の政治団体との“付き合い”を敬遠する可能性もある。これは教団が持つ“反日思想”の可視化が進んだことも大きい。文鮮明教祖は存命時から日本を「
怨讐の国」としていた。教祖夫妻がこれまで一貫して日本を「怨讐の国」としてきたことは、教団の発行物などからも明らかだ。
〈参照:|
天宙聖和3周年News VISION2020〉
近年も韓鶴子は「人間的に考えれば赦すことのできない民族」と御言で言及、さらには広島への原爆投下を引き合いに悔い改めを迫るなど日本に対する”怨讐”を繰り返し日本の信者や幹部に説き、韓国への贖罪意識を駆り立てている。
〈参照:「
弁護士団体の要請を無視、“反社会的”教団の式典に来賓出席する閣僚たち」、「
安倍政権と蜜月の関係を築く一方で、統一教会・韓鶴子総裁が日本の幹部に下していた仰天指令」|ともにHBOL本連載〉
昨年末と今年初頭に韓国での修練会に参加した千人以上の日本の大学生2世信者による元従軍慰安婦や元徴用工への”謝罪”イベントや西大門歴史館見学及び少女像前での会見が複数の韓国主要メディアで報じられた際も、韓鶴子は「この国の為政者たちに影響を及ぼした」と称賛している。
〈参照:
「統一教会」のダブスタについて、教団と近い政治家や論客の見解を聞いてみた|HBOL〉
日本で政界工作を行う信者への影響を渡辺弁護士が解説する。
「韓鶴子の宣言によって日本の政治家及び著名人の対策をしていた信者は困っているのではないでしょうか。日韓の世界日報が『韓国では反日』『日本では嫌韓を含む右派の擁護』とダブルスタンダードで論陣を張っていたことは、これまでも統一教会内部で問題になっていました。勝共連合においても前会長の太田洪量は韓鶴子に倣って反日の韓国支持を頑固に貫き、他の勝共メンバーから『それでは日本の政治家に嫌われる』と反感を持たれていました」
韓国への贖罪意識を植え付けようとする韓鶴子の”圧力”の度が過ぎると、これまで蜜月状態だった自民党安倍政権との関係に変化が起こる可能性も否定できない。
現在、教団では韓鶴子の自叙伝を一家庭当たり43冊購入し伝道に活用するよう指示が出されているが、この自叙伝『人類の涙をぬぐう平和の母』の内容に関し、韓鶴子が持つ日本への“怨讐”に関連した記述について、ある疑惑が持たれている。
6月に入っても日本の教団本部ビル壁面に掲げれらた教団名は従前のものから変わっておらず、公式ホームページも「世界平和統一家庭連合」のまま、何の「お知らせ」もなされていない。文化庁へ教団名称の変更申請をしたとの情報も現在のところ入っていない。
韓鶴子の思い付きに振り回される日本の教団組織。幹部の嘆きの声が聴こえてきそうだ。(文中一部敬称略)
<取材・文/鈴木エイト(ジャーナリスト)>
すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:
@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教カルトと政治というテーマのほかにカルトの2世問題や反ワクチン問題を取材しイベントの主催も行う。共著に『
徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)、『
日本を壊した安倍政権』(扶桑社)