内閣記者会「記者クラブに関して議論は行われていない」
安倍首相に記者クラブについて
「皆さんで議論を」と要請された内閣記者会に質問書を送ったところ、5月8日にメールの添付文書で回答があった。畠山氏の首相との質疑応答に関する部分を紹介する。
――内閣記者会として、首相の「今までのメディアがすべてカバーしているのかと言えば、そうではない時代になり始めました」という認識について、記者会としてどう思いますか。
内閣記者会:記者会としましては、引き続き時代の変化とメディアの多様性を認識した運営に努めてまいりたいと思います。
――記者会として、総会などの場で議論をしましたか。
内閣記者会:お尋ねの件に関しまして、現時点(5月8日時点)で総会での議論は行われておりません。今後についても未定ではありますが、加盟社から要請があった場合に検討することになろうかと思います。
――首相は「自民党政権の中において、こうした形で(記者クラブに関して)ご質問をいただいたのは初めてのこと」と回答しましたが、これは事実でしょうか。
内閣記者会:内閣記者会として「自民党政権下で初めてのこと」かどうか確認できておりません。首相サイドや自民党本部などにあわせてお問い合わせいただけますでしょうか。
回答をみてもわかるように、
内閣記者会は首相の呼び掛けにまったく応じていないのだ。
筆者は、首相会見を事実上仕切っている官邸側にも取材した。4月30日、総理大臣官邸報道室の坂上調査官に電話をかけ「取材依頼書を送りたい」と述べてFAX番号を聞いたが、
「質問が曖昧で、教えられない」と拒否された。筆者は声を出せないので、妻が代理で聞いた。
坂上調査官は「自民党政権下で首相が記者クラブ問題で答えたのは初めて、というのは事実か」という電話での問いに、
「私はわからないが、首相がそう言っているのだからそのとおりではないでしょうか」と答えた。また、
「報道室に関する限り、このことで内閣記者会からは何のアクションもない。またどこからも反響がない」と述べた。
ある内閣記者会メンバーが報道室のFAX番号を教えてくれたので、「内閣記者会から報道室に聞いてほしいという回答があったので、質問に答えてほしい」と5月11日に取材依頼書を安倍首相、上村秀紀報道室長、坂上氏の3名に送った。13項目の質問書を添えたが、期限の14日夕方までに回答はなかった。
安倍首相は「オープンな会見」を約束したが、
官邸報道室は官房長官の会見出席者を「1社1人」に制限するなど、報道規制を強めている。一方、『東京新聞』の望月衣塑子記者が首相の問題提起に応えて
「記者クラブ問題を討議しよう」と呼び掛け始めた。筆者も改めて記者クラブについての記事を書きたい。
<文/浅野健一>
あさのけんいち●ジャーナリスト、元同志社大学大学院教授