安倍首相にとってメディアは「報道機関」ではなく「広報機関」という認識!?
――首相が言った「皆様方」は、どういう人を指すと考えますか。
畠山:内閣記者会とフリーランスの記者、国民を指しているものだと考えます。ただし、安倍首相は私の質問に対して「皆様方に議論していただきたい」と余裕しゃくしゃくの表情で答えています。
「内閣記者会の壁を超えられるわけがないだろう」という安倍首相の意識が透けて見えた気がします。内閣記者会が「官邸の情報を独占する」という自らの利権を捨てるはずがないからです。安倍首相の回答は、そのことを十分にわかったうえでの発言だろうと感じました。
そもそも内閣記者会が主催しているといいながら、参加についてのやりとりは「官邸報道室」が窓口になっています。内閣記者会がリードして何かを決める権限を持っているとは思えません。議論しようにも、内閣記者会の窓口がどこなのかすらわかりません。それなのに「皆様方で議論して」というのはありえない話です。
――首相の発言の意味をどうとらえていますか。
畠山:この日の会見で安倍首相は布マスクについての質問をした『朝日新聞』の記者に対して「御社でも3300円で販売していた」と皮肉を述べています。これはSNSなどで広まっていた話を前提にしていると思います。つまり、インターネットでの情報を安倍首相が重視していることを指しています。
安倍政権は、FacebookやTwitterなど、SNSの反応を非常に気にしています。インターネットは発信者側が言いたいことを言いっぱなしにできるメディアなので、そこを利用したいのだと思います。安倍首相にとって、メディアとは「報道機関」ではなく「広報機関」という認識なのでしょう。
再質問できないところが、首相会見がオープンではない証
――追加質問はどういう意図によるものでしたか。長谷川内閣広報官はそれにどう対応しましたか。
畠山:私が自席から発したのは「日本記者クラブでの会見に応じるお考えはありますか」というものです。実際には「日本記者クラブでの会見」とまで言ったところで、長谷川内閣広報官が割って入り「すみません。後の、ほかの皆さんがご質問を希望されているので」という流れになりました。
安倍総理の具体的な言質を取れなかったことが悔やまれます。表面上は「応じる姿勢がある」という印象を観ていた人に与えたからです。私が「日本記者クラブでの会見」と言ったのは、3月5日からインターネット上の署名サイト「change.org」で始まった
「十分な時間を確保したオープンな首相記者会見を求めます」という署名活動が前提にありました。
私はこの署名に4万筆以上集まっていることを前提に、「日本記者クラブの会見に応じるつもりはあるか」と追加質問を席から投げかけようとしたのです。再質問できないところが、官邸会見がオープンではない証です。
再質問できていれば「首相の言いっぱなし」を防ぐこともできるのに、それができない。参加者が極めて限られていることと併せて、官邸での記者会見が政権のPRの場になっている。こうした記者会見のあり方は必ず改善しなければならないと思います。
――畠山さんの質問、首相の回答に関して、どんな反響がありましたか
畠山:複数の友人・知人から「記者会見、見たよ」とすぐに連絡が来ました。私が
『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)を書いた時から知っている人や同書の読者の方、SNSで私が記者会見オープン化の問題に取り組んでいたことを知っていた人たちから、「ようやく当たりましたね」と祝福の連絡が来たり、SNSで「記者クラブのことをよくぞ聞いてくれた」と大きな反響があったりました。
記者クラブに関する質問、首相会見のあり方についての記事は、これから『週刊プレイボーイ』(集英社)で書く予定です(同誌5月25日号に掲載)。