特別監察委員会の委員は自らヒアリングを行っていないのか?
大串議員に対する答弁でも、定塚官房長は「局長、課長、合計20名の方には委員の方に『必ず加わっていただいております』」と答弁していた。ヒアリングの場にはいたが、みずからヒアリングをしたわけではない、少なくても局長級11名と課長級9名の20名すべてについて委員がみずからヒアリングを行ったわけではない――その可能性が高そうだ。
もしかしたら、委員である外部有識者は、みずからヒアリングを行わず、ヒアリングの場に「同席」していただけなのかもしれない。
この閉会中審査の後の1月27日の
日本経済新聞は、「勤労統計巡る監察委調査、厚労省幹部が同席 中立性に疑念」という見出しで、「監察委委員が実施したとしていた20人の局長・課長級の職員・元職員への聞き取りについても、少なくとも一部の調査対象者に同省幹部が同席していたことが新たに判明した」と報じている。しかし、職員が「同席」していたのではなく、少なくとも一部のヒアリングについては、委員が「同席」していただけだったのかもしれない。
さらに1月28日の
朝日新聞は、「監察委に厚労省官房長も同席 聴取の第三者性確保されず」という見出しで、特別監察委員会の外部有識者が実施した課長・局長級職員への聞き取りに、定塚由美子官房長が同席し、質問もしていたことが分かったと報じている。複数の関係者が明らかにしたという。これらは、国会での追及があったからこそ明らかになった事実だろう。
国会答弁の中で定塚官房長は、「ワープロ作業」などの言葉で、自分たち職員の存在感をできるだけ消そうとしていたが、その存在は消しようがなかったのだ。
24日午後の参議院厚生労働委員会になると、特別監察委員会の委員が直接ヒアリングしたのかどうかに関する答弁は、ますます混迷していく。
「監察委員会がヒアリングをした、そのうち監察委員会の方が直接ヒアリングをされたのは何人ですか」との石橋通宏議員(立憲民主党)の質疑に対し、根本大臣は、
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監察委員会が、要は、有識者の監察委員会が直接ヒアリングをしたのは、局長級が11で課長級が9人、そして補佐以下が11人、トータル31人であります。そして、監察委員会のメンバーが具体的に何人ヒアリングしたかということについては、大変申し訳ありませんが、精査中であります。
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と、答弁している。
さらに、補佐以下の11人については事務方がヒアリングをしたことを答弁したあとで、根本大臣はこうも答弁している。
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委員会で委員がヒアリングをしたのは、局長級が11人、課長級が9人でありますが、これは今なお精査中でありますので、少しここは精査をさせていただきたいと思います。
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何が言いたいのか意味不明だが、おそらく、「委員会で委員がヒアリングしたのは、局長級が11人、課長級が9人」という答弁は撤回に追い込まれていくだろう。
石橋議員は、
「ちょっと待ってくださいよ。委員長をはじめ、委員の皆さんが直接ヒアリングした方はいないんですか」と質疑の中で問うていた。それに対する
根本大臣の答弁が、上記の「精査をさせていただきたい」なのだ。
この質疑では、野党が求める樋口委員長のこの閉会中審査への参考人招致が認められなかった、という事実も明らかにされている。与党も勤労統計調査の不正については大問題だという姿勢を国会質疑では見せているが、委員長の参考人招致は認めなかったのだろう。果たして委員長はみずからヒアリングを行ったのか。これも疑問だ。
さしあたりは定塚官房長の言葉が正しいという仮定のもとに、ヒアリング人数について、下記の通り整理しておきたい。
1月28日(月)18:30からは新宿西口広場にて、国会審議映像をさらに2つ追加し、筆者に加えてゲスト解説として全労連の伊藤圭一・雇用労働法政局長も迎えて、生解説つきで国会審議を緊急街頭上映する予定。