勤労統計の不正調査問題、特別監察委員は果たして実際にヒアリングを行ったのか?

特別監察委員は実際にヒアリングを行ったのか?

 こうなると、この特別監察委員会の報告書の内容そのもの信憑性を疑ってかかる必要が出てくる。「弁護士、公認会計士等の外部有識者『も』メンバーとして『参加した』厚生労働省の監察チーム」という記述のように、都合の悪いことは巧妙に隠されているのだから。  となると、気になるのは、特別監察委員会が行ったヒアリングの実人員について、根本大臣の答弁と定塚官房長の答弁に齟齬が生じていたことだ。根本大臣は「監察委員会としてヒアリングをした実人員、これは局長級9名、課長級2名であります」と答弁していたのに、そのあとに答弁に立った定塚官房長はこれを訂正して「監察委員会、本委員会でございますが、局長級が11名、課長級が9名、補佐以下が11名の計31名となっております」と人数が変わっているのだ。  そしてさらに「不都合な事実」が露呈していく。特別監察委員会としてのヒアリングは、特別監察委員会の委員がみずから行ったとは限らない、という事実だ。  上に構成員名簿で確認したように、監察チームには職員がメンバーとして参加しているが、特別監察委員会は外部有識者だけで構成されていた。根本大臣も西村智奈美議員(立憲民主党)に対する答弁の中で、「有識者だけで構成される監察委員会」「これは事務方も入らない監察委員会」と答弁していた。  しかし特別監察委員会としてのヒアリングは外部有識者がヒアリングをしているのか、という大串議員の問いに対して、定塚由美子官房長は次のような微妙な答弁を行うのだ。 *********  監察委員会の先生方とご相談をしまして、局長、課長については大変責任が重いということで、これは必ず委員の方にヒアリングをしていただくということにしたわけでございます。したがいまして、局長、課長、合計20名の方には委員の方に必ず加わっていただいております。 *********  補佐以下11名はどうなのだ、という話だが、補佐以下11名は事務方だけでヒアリングをしたことがその後の根本大臣の答弁で明らかになる。  しかしここで問題にしたいのは、局長級11名と課長級9名のヒアリングを有識者委員が自ら行ったのかどうかだ。定塚官房長は「必ず委員の方にヒアリングをしていただくということにした」と言いつつ、「局長、課長、合計20名の方には委員の方に『必ず加わっていただいております』」と答弁している。  ということは、委員は「加わって」はいたが、実際に委員が自分でヒアリングしたかどうかは、明言されていないということだ。では委員の他に誰がいるのかと言えば、根本大臣は「有識者だけで構成される監察委員会」「これは事務方も入らない監察委員会」と答弁していた。矛盾が生じる

特別監察委員会も事務方が主導

 その後の高橋千鶴子議員(日本共産党)の質疑でその謎は解けていく。「有識者だけで構成される監察委員会」「これは事務方も入らない監察委員会」と根本大臣は答弁しており、報告書には事務方の記載はなかったが、報告書の「たたき台」を書いたのは事務方であることが高橋議員の質疑で明らかにされていくのだ。つまり、特別監察委員会も事務方が主導していたというわけだ。  高橋議員の質疑に対し、定塚官房長は、特別監察委員会における事務方(=職員)の役割をできるだけ消し去ろうとする方向での答弁を行う。「ワープロ作業」という言葉を二度使った定塚官房長の次の答弁をじっくり読んでいただきたい。 *********  たたき台は事務局人事課でつくり、ワープロ作業は人事課職員がしてまいりましたけれども、もちろん、これは委員長と他の委員の方が議論しながら、こういうことだよね、ヒアリングを聞きながらこうだよねということをおっしゃっていたことを事務方としてまとめたというものでございまして、また、人事課としても、今回この事案が起こりました統計情報部とは異なる部局に置くということで、官房人事課に置いたものでございます。  そうした意味で、委員の先生の指導を受けながら、省内では、中立的な立場である官房人事課において、委員の先生方の意見をワープロ作業するというような形でまとめていったものというふうにお考えいただければと思います。 *********  なんとか自分たち官房人事課の役割を消そうという気持ちは伝わってくるが、定塚官房長をはじめとする官房人事課が特別監察委員会で重要な役割を果たしたことは否定しようがない。  この高橋千鶴子議員の質疑に対する定塚官房長の答弁は、国会パブリックビューイングによる26日の緊急ライブ配信でも紹介した。下記の頭出し映像でご覧いただきたい(53分18秒~  こうなってくると、特別監察委員会として行ったヒアリングも、委員が行ったのではなく、構成員としては名前が挙がっていない事務方の職員が行った可能性が浮上してくる。  そこで気になるのが、この定塚官房長の答弁にある「ヒアリングを聞きながらこうだよねということをおっしゃっていたことを事務方としてまとめた」という表現だ。「ヒアリングを『聞きながら』」とはどういうことだろう? 自らがヒアリングを行ったのではなく、ヒアリングの席に同席していただけなのだろうか?
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特別監査委員会の委員は自らヒアリングしていない!?
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 1月28日(月)18:30からは新宿西口広場にて、国会審議映像をさらに2つ追加し、筆者に加えてゲスト解説として全労連の伊藤圭一・雇用労働法政局長も迎えて、生解説つきで国会審議を緊急街頭上映する予定。