この1月24日の閉会中審査で、特別監察委員会が「お手盛り」であることを最も質疑の中で暴き出したのは、大串博志議員(立憲民主党)の質疑だ。答弁に窮してたびたび速記が止まったその様子を、ぜひ「
衆議院インターネット審議中継」の録画で見ていただきたい。
大串議員は、監察チームと監察委員会が、実際に何人にヒアリングしたのかを尋ねている。報告書には次の通り、延べ人数しか記されていないからだ(報告書p.4)。
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今般の事案に係る事実関係及び責任の所在を解明するため、監察チームとして局長・課長級延べ14名、課長補佐以下級延べ15名に対してヒアリングを実施してきた結果を踏まえ、本委員会においてもさらに局長・課長級延べ27名、課長補佐以下級延べ13名に対してヒアリングを実施し、合計で延べ69名の職員元職員に対してヒアリング等を実施した。なお、ヒアリングの企画及び実施は、外部有識者の参画の下で行われた。
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しかし、この問いに答弁がなされない。すぐに答弁が行われない場合は、野党の質疑時間を確保するために委員長が「速記を止めてください」と指示しなければならないが、大串議員が求めても富岡勉委員長はすぐに速記を止めようとしない。
そのあとで根本大臣は実数を答えるのだが、この人数が答弁で定まらないのだ。
最初、根本大臣は、「実数で言えば、局長級11名、課長級9名、補佐以下級19名、実数で言うと39名」と答弁する。しかし、この39名のうち、監察チームで1月15日までにヒアリングしたのは何名で、特別監察委員会で1月16日以降ヒアリングしたのは何名か、と大串議員が質問すると、
また答弁ができない状況に陥り、速記が止まる。
その後、根本大臣は「監察委員会としてヒアリングした実人員、これは局長級9名、課長級2名であります」と監察委員会のことだけを答弁し、監察チームについては答弁せず、再び速記が止まる。
そののち、根本大臣は、監察チームについては、「チームの有識者が直接該当したと思われる人間にヒアリングをするということではなくて、担当部局から、中身を、内容を、聴取している、こういうことであります」と、監察チームのヒアリングは有識者ではなく担当部局が行っていたことを明らかにするのだ。
さらに、その後に答弁に立った定塚由美子官房長は、「監察委員会としてヒアリングした実人員、これは局長級9名、課長級2名」という根本大臣の答弁を訂正してこう語る。
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まず、監察チームでございます。局長級3名、課長級8名、補佐以下が13名の計24名でございました。
また、監察委員会、本委員会でございますが、局長級が11名、課長級が9名、補佐以下が11名の計31名となっております。
なお、チームと委員会双方でヒアリングを行っているという方も18名ございますので、合計での実人員、ヒアリングをした数というのは37名ということでございます。
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大串議員は前日から事務方に実人員を出すことを求めていたという。にもかかわらずそれが答弁できずに長々と速記が止まり、根本大臣の答弁を定塚官房長が訂正するというのはどういうことなのか。どうやらここに
「不都合な事実」が隠れているらしい、ということがこの経緯からわかる。
質疑で明らかになった1つの「不都合な事実」は、
監察チームにおいては有識者ではなく職員がヒアリングを行っていた、ということだ。先ほどの根本大臣の答弁からもそれがうかがわれるが、大串議員が改めて確認すると定塚官房長はこう答えている。
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監察チームにつきましては職員及び有識者で構成されるものではございますけれども、今回のヒアリングにおきましては、今申し上げた人数、24人につきまして、私官房長以下、職員であるチームメンバーが行っているというものでございます。
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そのように職員だけで行ったヒアリング結果が、監察委員会に引き継がれて、監察委員会の判断の素材となったのだ。どこが第三者委員会だ、ということになる。
先にも見たように報告書では監察チームに職員がいること(しかも主査は職員である定塚官房長だ)をうかがわせる記述はなく、「今般の事案については、本委員会の設置以前から、弁護士、公認会計士等の外部有識者もメンバーとして参加した厚生労働省の監察チームにおいて、職員への聴取等が行われてきた」(p.4)と記されていた。
しかし、大串議員の質疑で明らかになったように、監察チームによる聴取には監察チームの外部有識者は参加せず、監察チームの職員だけがヒアリングを担当していたのだ。
1月28日(月)18:30からは新宿西口広場にて、国会審議映像をさらに2つ追加し、筆者に加えてゲスト解説として全労連の伊藤圭一・雇用労働法政局長も迎えて、生解説つきで国会審議を緊急街頭上映する予定。