写真右側に立つふたりはまだ15歳の中学生で、両親がチームに預けて活動をさせている
バンコクでは20歳以上の者で、かつ応急処置訓練初級コースを修了していないとボランティアに申し込むことすらできない。場合によっては未成年者もいるが、それは隊員の子だ。それがサラブリでは15歳くらいから活動に参加していた。氏が説明をしてくれた。
「地方の報徳堂では20歳未満は親の承諾書を持ってくることで登録が可能です。親もバイクで暴走したり、アルコールや麻薬に走るよりはいいということで参加を許していますよ」
最近は頭金なしでもオートバイが買えるようになっている。また、地方では中学生のバイク通学も珍しくない。若さゆえに、特に男子が集まると競走をしたり、ときには暴走族のように傍若無人に振る舞う。また、タイは麻薬もかなり身近にあり、日本での中学高校に当たる学年では学校が麻薬検査を実施するほど深刻でもある。そういった問題を起こすよりは、社会貢献にもなるので報徳堂に預けるという親もいるのだ。あるチームのリーダーがこう言った。
「預かった以上は責任を持ちます。必ず各チームで誰が面倒を見るかを決め、参加中はずっと一緒にいます。もし、彼らが来ないときはこちらから親に電話をして、我々と一緒にいないということを伝えています」
意外にもただいさせるわけでなく、しっかりと責任を持って預かっているようである。
バンコクでは人口の多さもあり、報徳堂のボランティアだけでも数千人はいるとされている中では未成年者を受け入れるのは管理的に難しい。地方ならではの対応という点で、とりあえずEMS以外でも社会貢献をしているというのは興味深いところであった。
地方の道路は夜間は暗い上に高速で飛ばす車が多い。そのため、重大事故が相次ぐ。湧上氏もそんな激しい現場の場数をかなり踏んできている。しかし、取材日は平和そのもので、大きな事故が起きることはなかった。そんな深夜3時、氏はその日のボランティア活動を終えて帰路についた。
サラブリを始め、タイの地方都市を結ぶ国道は夜間は高速走行が多いが街路灯が少なく、重大事故が多発する
<取材・文/高田胤臣(Twitter ID:
@NaturalNENEAM)>