ロンドン再封鎖11週目。桜を観ることができるような心理的余裕によって気づく社会の軋轢<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

「ロックダウン」を終わらせないのは誰なのか?

すし詰めの青空市場

もしかしたら英国人たちはただただ群れたいのかもしれない。コロナ以前は閑古鳥が啼いていた青空市場がいまは鮨詰め。皆マスクはしているが警戒心の強いツレは決して入場しない

 これまでのリサーチで判ってきたようにこのウィルスはまず病人やお年寄り、貧しい人たちを襲います。犠牲になるのはそんな社会的弱者なのです。今回のデモに参加した人々は「知ったこっちゃないわ」と言っているように見える。「〝そんなの〟より重要なのは政府の横暴の阻止よ!」  わたしは〝そんなの〟に属する人間ですから、監視社会同様にコロナに支配された社会も恐怖なのです。   ちょっと、このツイートをご覧ください。英国のコメディアンで俳優、文筆家であり映画監督としても活躍するスティーブン・フライの投稿  どうやらロシアの「ドッキリカメラ」らしき映像で、背中にOKHRANA(セキュリティ)と書かれた屈強な制服の男性がマスクをしていない人を見つけると問答無用で警棒を使って殴りつけるというものです。それを見ていた周りの通行人が慌ててマスクをつけだすという内容。いろいろ考えさせられます。  もちろん棍棒はおもちゃだし、ふたりとも役者であるのは明らか。しかしロケーションがロシアなだけにものすごいリアリティがあるのです。騙された一般の人たちも、そのリアリティゆえに「あり得べき」ことだと思って一斉にマスク着用するわけで。そして、みんなつけてなくても所持しているということは公衆の場では口元を覆うべきと知ってはいるわけで。  わたしはこれを見て、ゾッとすると同時に、なんとなく「やっちゃえ! やっちゃえ!」っぽい爽快感も覚えてしまって、それに対してすごく後ろめたい気持ちになりました。そんなふうに感じてしまう自分が許せないというかなんというか。  ロンドンのデモを眺めながら「そんなことしてるからロックダウンが終わらへんのちゃうん!? ロックダウンを招いてるのは、そこ歩いてるアンチのせいちゃうん!?」と憤ってしまうのに、とてもよく似たジレンマです。難儀ですね。

ワクチンパスポートはニューノーマルになるのか?

 それらのデモ問題と並んでこれからひと悶着ありそうだなーと想像できるのは先月から膾炙(かいしゃ)されているワクチンパスポート(*1)についてです。政府が現在二度目のワクチン接種を終えた国民に対して旅券(的役割を果たすカード)を配布しようと計画してるという話は折々に触れてきましたが、いよいよ本格的にそれが始動しそうなのです。  こちらについても前述したような1984的不安から疑問視する声はあとを絶ちません。こういう形で施政者に個人情報を把握されることへの恐怖を拭い去るのはどれだけ理路整然と諭されても難しい。けれど外部ではなく政府直属の機構が統括するのであればわたしは反対しません。だってワクチンについてはもはや是非を論議する段階はとっくに過ぎてますから。  23日、ジョンソン首相はこのパスポートの利用法として例えばパブに入店するときに提示を義務付けるつもりだと発言しました。これには国中の飲兵衛から「えーっ!」という声が上がった。しかし思うのです。国民全員が接種を受容するモチベとなるのならばなんでもやればいい。いや、やるべき。  7月末までに成人全員に接種を済ませたい政府としては「若いから必要ないもーん」とワクチンを拒否して平然とウイルス・スプレッダー化するであろう若者を取り込む方策を立てなければならない。そんなとき注射しなきゃ飲めないというのはかなり効果的なはず。パブだけでなくクラブやバーでも一杯やれなくなっちゃうだろうし。  もちろんワクチンを打っていれば安全な人かといえばそんなことはない。というかいまのところまだ立証されていない。でも重症化を食い止める効果は確実なのだから、よしんば感染させられたとしても手の施しようがある。肝心なのはそこなのです。  おそらくワクチンパスポート法案は国会を通過するでしょう。ずっと閉鎖されていた劇場やライブハウス、コンサートホールを開く最良の鍵となるのは間違いないからです。映画館や美術館、博物館などでも必要になってくるかもしれません。ジムやカルチャー教室の類も然り。なんならカフェや飲食店全般に敷衍(ふえん)していただいてもかまいません。
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まともに接種が始まってないのに五輪開催の愚
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