検査法の原理を知ればあり得ない「検査をすると患者が増える」エセ医療・エセ科学デマゴギー(前編)

PCR検査イメージ

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一斉に消えた「ベイズ推定をするとPCR検査は60%が偽陽性」論

 ここまで5回(1,2,3,4,5)に渡って、「検査をすると患者が増える」「検査をすると医療崩壊」「検査をすると人権侵害」といったジャパンオリジナル・国策翼賛エセ医療・エセ科学デマゴギーについて実際の世界の統計と照合することによってそのペテンを暴いてきました。  面白いことに、連載開始前はネットで大暴れしていた「ベイズ推定をするとPCR検査は60%が偽陽性」とか言ったジャパンオリジナル・国策翼賛エセ医療・エセ科学デマゴギーのブログ、まとめサイト、Togetterまとめが蜘蛛の子を散らすように消えてしまいました。幾つかは保存していますが、ニセ科学批判・ニセ医療批判では、そこそこ知られた方々がこのデマゴギーに翼賛し、半年間暴れ回った挙げ句そっと消してしまったのには、その不誠実さに心底呆れています。  これらの方々が、なぜ仮説の検定や、仮説と事実との照合という科学のイロハのイを怠ったのかは謎です。どのような見かけ上権威の発言であってもどのような仮説や仮定も科学的検証を必須とします。

いまだにエセ医療・エセ科学デマゴギーに捕らわれる教条主義日本、大量検査で前進する全世界

 しかし、いまだに医師、医学研究者、医系技官、厚労省官僚による「検査をすると患者が増える」「検査をすると医療崩壊」「検査をすると人権侵害」といったジャパンオリジナル・国策翼賛エセ医療・エセ科学デマゴギーは健在で、彼らは嘘を書き散らしています。  例えば、ある都内保健所所長である医学博士による根本的に誤った発言。(発言は7/31になされ、厳しい批判を浴びた結果、削除されている。魚拓は残されている。) ”コロナ感染者が0.1%存在する人口10万人の町があるとします。感度が70%、特異度99.9%のPCR検査を全住民に行うと、170人が検査陽性と判定されます。計算上、検査陽性170人のうち本当の感染者は70人のみ。陽性的中率(検査の正確性)は、70÷170= 41%となります。” ”理論上、陽性的中率は、検査前確率が高くなるほど高くなり、逆に、検査前確率が低くなるほど低くなります。”  この発言は、本邦を汚染し尽くしている「いち、じゅう、ひゃく、せん、たくさん、いっぱい、わかんない」という一万円札を上限として5桁以上の数が分からない暗記パン医者、暗記パン医学研究者、暗記パン医系技官に共通の誤りであることは指摘してきました。  まず、感度の過小評価は、感染研の推奨する検体採取手順を知っていればこのような誤りは犯しません。三種三検体採取で、合成感度は97%以上、検査陰性でも症状が出れば再検査で合成感度99.9%以上というのは、高校数学の話です。感染研のマニュアルを読んでいないのでしょうか? 「検査陰性は、必ずしも非感染の証明にならない」など世界の常識です。防疫上は、接触履歴のある人は、接触から二週間の自己隔離をセットにすれば良いだけで、運用の問題です。世界では、PCR検査の精度など問題になっておらず、日進月歩で運用の改善とさらなる大規模検査がなされています。  特異度99%や、99.9%というのも尾身茂博士らが持ち出した国策エセ医療・エセ科学デマゴギーであり、全く根拠がありません。詳しくは過去3回の記事(これこれこれ)をお読みください。高校生でも理解できます。日常的に報じられている様々な国と本邦におけるCOVID-19に関する統計情報を自分で検算してみるという中学生でもできる基本的手順を一度でも行えば、このような荒唐無稽な数字では現実を一切説明できないことが10分程度で分かります。
尾身茂氏

科学的に完全に誤りである国策エセ医療・エセ科学デマゴギーをど真ん中に据えて記者会見を行う尾身茂博士。襟には厚生労働省の記章が輝いている。
特異度99%、感度70%としてPCR法の根本的に誤った説明を行っている
【LIVE】専門家会議廃止して新設 新型コロナ 新「分科会」が初会合2020/07/05 FNNプライムオンラインより

 現実を説明できない仮説は、科学的に棄却されます。これにはケプラーも苦しみ、惑星の軌道を真円から楕円として、ケプラーの法則を確立した重要な切掛けとなっています*。 〈*ケプラーは当初、惑星の公転軌道を真円として仮説を組み立てたが、これではティコ・ブラーエの残した精密な惑星運行の観測値を説明できなかった。そして、惑星運行の予測精度は天動説による予測に劣った。ケプラーは、公転軌道が真円という仮説を棄却し、楕円軌道を導入したところ、極めて精度良く惑星運行を再現し、予測できるようになった。科学では、事実を説明できない仮説は、棄却される。それによって真実に近づくことができる。事実を説明できない仮説への固執は典型的なドグマティズム(教条主義)である〉  これらの現実を説明できないが故に科学的にも論理的にも棄却される仮説は、医師国家試験の例題としてよく目にするものであり、わざとおかしな結果を導出するために作られたものであって、PCR法の説明に用いることには科学的にも論理的にも全く無根拠であり根本的な誤りです。  この七ヶ月間、本邦を汚染し尽くした、「検査をすると患者が増える」「検査をすると医療崩壊」「検査をすると人権侵害」といったジャパンオリジナル・の珍説は、その核心が根本的に誤ったベイズ推定によるエセ医療・エセ科学デマゴギーであり、単に問題集を暗記しているだけで、中身を理解していない、自分で検算すらしない、暗記パン医者、暗記パン医学研究者、暗記パン医系技官に大人気です。繰り返しになりますが、これらのペテンについては、過去五回の記事(1,2,3,4,5)で徹底的に解説し、そのエセ科学・エセ医療ぶりを白日の下にさらしてきました。  ”感度70%、特異度99%、99.9%で、「PCR法は偽陽性で患者が増える」”という珍説は、地球上に本邦と、トランプ大統領周辺にしか存在していませんが、現実を一切説明できず、科学的には完全にフェイクです。  従って、合衆国市民に信頼され、大人気のファウチ博士*ら合衆国の専門家は、ホワイトハウスの意向をガン無視し、抗体検査を含め一日あたり100万件足らずという未曾有の大規模検査を行い、更に350万検査/日、500万検査/日を目指しています。100万件の検査規模は、人口比で換算すると日本では約40万件/日に相当する検査規模です。一方、日本の検査規模は、7/22のピーク値を取っても抗体検査を含めてたったの2万件です。なお、本邦の累計検査数は7/27現在で101万件ですから、合衆国は、ほぼ1日で本邦の7か月間累計検査数を実施していることになります。医療と防疫でKamikaze Attackなどという愚かなことは、直ちにやめていただきたいです。 〈*昨季王者ナショナルズ、開幕戦の始球式にファウチ所長 米大リーグ 2020/07/21 CNNDr. Anthony Fauci’s baseball card just became one of the best selling in Topps’ history 2020/07/27 CNN (動画あり)/国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長が、ナショナルズ対ヤンキース開幕戦の始球式に招待された。合衆国でのファウチ博士人気はたいへんなもので、ファウチ博士のベースボール・カードは、史上最高の売れ行きである〉
合衆国と日本の日毎検査数の推移(線形)

合衆国と日本の日毎検査数の推移(線形)
合衆国、日本共にPCR検査に一部抗体検査を含む
合衆国は単位不明(州によって集計法が異なるため)、日本は、検査人数
Our World in DATAより

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そもそもPCR法でベイズ推定を用いて良いのか?・・・・駄目です。
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