現実と数字を見れば一目瞭然。PCR検査特異度が99.9999%と99%でも「議論が変わらない」のデタラメさ

ネパールのPCR検査風景

ネパールで行われているPCR検査の光景。PCR検査は世界標準であり、検査キットは概ねMade in Japan なのに日本ではなぜか妙な「PCR不要論」が事もあろうに医療関係者から発信されている
(Photo by Narayan Maharjan/NurPhoto via Getty Images)

いよいよ転換点の本邦だが、リーダーシップ不在

 ここまで、世界でもとりわけ目立ち始めた合衆国本邦というコロナ二大失敗国について統計を用いて論じてきました。本邦は、東部アジア・大洋州を覆うコロナ禍の威力を1/100とする謎々効果前回を参照のこと)に守られていますが、統計の挙動は世界では少数派の第一次第二波パンデミックの制御不能拡大中という合衆国と同じ事態に陥っています。  合衆国と本邦とでは、第一次第二波パンデミックが制御不能の大規模拡大というたいへんに困った事態の根本的原因はやや異なりますが、第一波パンデミックの制圧が不完全な状態で社会的行動制限を解除したために市中の未把握感染者から約1カ月をかけて社会にSARS-CoV-2(新型コロナウィルス)が蔓延して行き、更に1ヶ月で制御不能に至ったという点では共通しています。後半の1ヶ月は、ロックダウンを視野に入れた厳しい社会的行動制限無しにパンデミックを制圧できる最後の機会で、合衆国は既にその段階をとっくに過ぎ去っていますが、本邦は、いよいよその最後のチャンスを失いつつあると筆者は考えています。本邦市民による自発的な社会的行動制限で十分であるかは近くはっきりします。筆者は、国と自治体による社会的行動制限を行わなければ、死者こそ少ないものの合衆国と同様の状態に陥り、ロックダウン導入の可能性も含めた厳しい介入が不可避になると考えています。  今はまさに為政者のリーダーシップが問われているのですが、本邦では首相は雲隠れ記者会見はまったくなく、夕方1時間だけ官邸に顔を出すだけの日が目立ち、最近ではそれすら無く、自宅から出てこない日が出始めています。東京都知事はTV映えを気にしてか連日コロナパンデミック統計の予告編がメディアに現れる始末、大阪も公務そっちのけでTV出演ばかりです。皆さん、なかなかトランプ大統領の真似が上手いものです。合衆国ではトランプ氏はリーダーシップの無い、歴代希にみる駄目な大統領と激しい批判を集め支持率がほぼ全属性で急降下*しています。合衆国の多くの州は、トランプ大統領とフロリダ州など一部の州知事のリーダーシップ不在によって地上の地獄の門をくぐってしまいました。 〈*フロリダ州、テキサス州、アリゾナ州などで病院がパンクし始め危機的状況の中でトランプ大統領のインスタグラム・アカウントに投稿された写真。
 この写真を見て、CNNアンカーのクリス・クオモは、合衆国未曾有の危機のさなか、大統領が危機に対応せずに大統領執務室で豆のプロモーション撮影をしていた事に番組中でマジギレ大噴火**した。 **Chris Cuomo blasts Trump for promoting Goya products during coronavirus pandemic 2020/07/16 The Washington Post/ちなみに、クリス・クオモ氏は、コロナ・サバイバーであり、軽症のため3月30日から自宅地下室で自己隔離していた。遠隔参加でほぼ毎日短時間の出演をしていたものの、日に日に目に見えて弱って行く姿は衝撃的であった(参照:CNN

日米でまさかの政治問題化したパンデミック対策

 日米は、ともに世界最高水準の科学・技術と医療を誇っており、本来は新型コロナ・パンデミック対策でも世界で最優秀の成績を挙げる筈でした。ところが両国共にガッタガッタで大規模な第二波パンデミックを起こしています。  この両国では、パンデミック対策の重要な手段が政治対立の象徴となってしまい、正常な対策を妨げているという後世の歴史研究者が困惑することが起きています。  合衆国では「マスク」、本邦では「PCR検査」です。  合衆国では、マスク着用義務化は呼吸権の侵害、自由権の侵害だと主張する保守系市民の激しい抵抗を受けており、共和党系の集会でのマスク着用率は目に見えて低いものとなっています。逆に民主党系、独立系リベラルの集会では殆どの人がマスクを着用しています。新型コロナウィルス対策タスクフォースのファウチ博士らは、「僅かな我慢で大きな安全が得られる」と市民にあらゆる機会を使って呼びかけ続けていますが、ホワイトハウスの協力が得られず思わしい結果は得られていません。  本邦では、PCR検査がそれで、「PCR検査をすれば感染者が増える」「PCR検査をすれば医療崩壊する」などといった本邦独自のエセ医療・エセ科学デマゴギーが蔓延り、PCR検査の人口あたり密度は全世界で最低位に相当することとなりました。当然の結果として感染者の多くが把握できなくなった結果、第二波パンデミックを誘致したと言えます。感染症の制圧過程で、大規模検査を継続的に行い、市中の感染者を根こそぎ洗い出して隔離(多くは自己隔離や宿泊待機となる)、治療し、ウィルスを殲滅する。これは3月初めの時点ですでにBBCやCNNでは、免疫・ワクチン無き感染症対策入門として報じられていた基本中の基本です。  合衆国のマスク拒否運動にはトランプ大統領の言動が大きく関与しています。一方で本邦のPCR検査抑制エセ医療・エセ科学デマゴギーには医療関係者、専門家、医学・科学研究者、医療教育者の関与が極めて大きいことが特徴と言えます。  本連載は、本邦においてなぜ医療関係者、専門家、医学・科学研究者がこのような荒唐無稽のジャパンオリジナル・エセ医療・エセ科学デマゴギーにチョロくはまったのかを6月の新型コロナ感染症シリーズ第11回から解き明かしてきています。

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ベイズ推定のトホホ誤用を前回に引き続き解説する

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