厳重な医療体制に自分自身は守られながら反科学的発言でパンデミック対策を妨害し続ける大統領とウイルスに屈しつつある米国の失敗

トランプ大統領

ウィスコンシン州の造船所でも「感染者数が増えているのはフェイクニュース」と演説したトランプ大統領
(photo via The White House on Flickr Public Domain)

世界におけるCOVID-19パンデミックの現状

 「日本はアジア東部・大洋州地域ではコロナ三大失敗国のワースト2」という現実を提示した記事から、間に次亜塩素酸の話題を2本挟んで3週間近く経過しました。世界に目を向けると、アフリカや中東、南アメリカでパンデミックの進行が深刻化している一方で、欧州ではスウェーデンを除く国でパンデミックの制圧はもちろんのこと、経済・社会活動の再開と国境再開に向けて順調に進んでいます。カンボジア以東アジア、オセアニア(大洋州)でも多くの国では、経済活動再開、国境再開に向けて順調に進んでいます。これらの国では、8月までにはパンデミックを一旦は克服できるものと思われます。一方で、ロシアでは初動の遅れからか未だに予断を許さない状況です。

合衆国の「失敗」

 合衆国は、たいへんに重い教訓となる挙動を示しています。合衆国は、3月末から4月にかけてロックダウンに近い社会活動抑制策をとりましたが、トランプ大統領率いる連邦政府および共和党系の州政府主導により最短のジョージア州(21日後)を筆頭に、最速では4月最終週からホワイトハウス・新型コロナウイルス対策タスクフォース(コロナ対策タスクフォース)のアンソニー・ファウチ博士などが時期尚早であると強い懸念を示すなか、南部バイブル・ベルト州を中心に社会・経済活動再開を推し進めました。  結果、5月下旬には南部と西海岸で新型コロナウィルス感染者数が増加を始め、5月26日のメモリアルデーの休日には、「このままでは三週間後にたいへんなことになる。」と合衆国疾病対策予防センター(CDC)などの専門家が強い憂慮の念を示すようになりました。  その一方で、トランプ政権は経済優先を掲げ、以前は毎日のように行われていたコロナ対策タスクフォースのメディア向けブリーフィングは、既に八週間以上行われていません*。2020/06/02のCNN報道によるとファウチ博士は、5月18日以降、トランプ大統領と面会していない**とのことで、その後も筆者がCNNやBBCを視聴する限り、ファウチ博士や本シリーズで大人気かつ、トランプ大統領との関係も良好とされるデボラ・バークス博士がトランプ大統領やペンス副大統領と面会したという報がありません。ファウチ博士は、下院公聴会などで、ホワイトハウスから市民に至るまで合衆国には、「反科学バイアスが浸透している。このままではたいへんなことになる。コロナパンデミックは、(感染症に関する米国の第一人者である:筆者補足)自分の経験する”最悪の悪夢”であることが判明した」などと語り***、「疲れた」と嘆いている****ことがCNNやCNBC、BBCなどで報じられました。79歳のたいへんなご高齢ながら、合衆国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長を1984年以来務め、コロナ対策タスクフォースにて政権に阿ることなく学者として、専門家としての筋を貫き且つトランプ大統領と決定的な対立に陥らないように苦心を続けてきたファウチ博士から「疲れた」という言葉が出たと報じられたとき、筆者はとても悲しくなりました。 〈*この原稿の執筆中の02020/06/26 12:30(EST)から、二ヶ月ぶりにコロナ対策タスクフォースのブリーフィングが行われると予告がで、約一時間半行われた。PBSがネット中継し、録画も視聴でききる。:WATCH LIVE: White House Coronavirus Task Force holds first briefing in two months 2020/06/26 PBS 〈**ファウチ所長、トランプ大統領と2週間会談せず2020/06/22 CNN〉 〈***Dr. Fauci frustrated Americans are ignoring science amid coronavirus 2020/06/19 CNBC〉 〈****「疲労困憊」と告白、コロナ対策指揮のファウチ所長 米2020/06/13 CNN
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第二波パンデミックが明確になってきた南部・西海岸
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