北朝鮮の新型ミサイルが日本に脅威であり、イージス・アショアではどうにもならない5つの理由

核弾頭搭載せずとも充分な破壊力

5) 弾頭として480kgの生物、化学、通常弾頭、ロシア版バンカーバスターを搭載できるとされる。また合衆国は、核弾頭を搭載しうるとして警戒している  ノドンなどのCEPが千〜数千メートル級の弾道ミサイルは、弾頭質量(ペイロード)が1t前後である。これは、CEPが大きく、目標を狙い撃ちできないために核弾頭(初期の核弾頭は1t前後となる)を搭載するか、大量の炸薬を搭載して広範囲に被害を及ぼす事を目標とする為である。  一方、CEPが小さくなれば弾頭質量は小さくても十分な効果が期待できる。また、核弾頭の小型化に成功すれば弾頭質量は500kg未満でも問題ない。その分の質量をロケット燃料や誘導・姿勢制御装置に回し、性能向上が出来る。  KN-23は、元となった9K720イスカンデルの高い汎用性を継承していると考えられており、化学、生物、通常弾頭、特殊弾頭が搭載できるとされる。  合衆国は核搭載可能と見做しているが、バンカーバスターの効かない大深度地下の施設や、核ミサイルのサイロを破壊する目的以外ではあまり意味がないであろう。故に北朝鮮にとって外交交渉の上での有力な手札となる*。 <*外交において豚札をジョーカーやスペードのエースのように見せかけるのはイロハのイであり、北朝鮮はこれをきわめて得意としてきている>  このように五つ挙げたKN-23の特徴は、これまでの対日弾道ミサイルの範疇を大きく超え、常識を覆すものです。  高い即応性と隠密性、迎撃困難な機動性、極めて高い命中精度、ペイロードの汎用性によって、固定目標であるならば射程内のあらゆる目標を破壊できると考えて良いです。一方で航行中の艦船など、移動目標の破壊は、きわめて大威力の核弾頭を使うか、まぐれ当たりでない限りまず不可能です。  またSRBMは、弾道弾としてはかなり安価ですが、固体燃料式の場合は取得費用だけでなく運用費用も安くなりますので、KN-23が量産に入った場合、大量配備されることが予想されます。一発あたり数十億円するミッドコース迎撃弾に比して数十分の一の費用で済むでしょう。実際日本が追加購入するSM-3 BlockIIAは、周辺機器を含めて一発あたり約50億円(FMS(対外有償軍事援助)であれば、実際には値段は大幅に上がる可能性が高い)*で、一般的なSRBMに比して五十倍前後から百倍の価格と思われます。また、SM-3では原理的にKN-23を迎撃できません。ここで思い出していただきたいのですが、元々日本政府は、イージス・アショアは、THAADよりずっと安いと説明してTHAADを排してイージス・アショアを導入したことです。 <*米、日本への弾道弾迎撃ミサイル売却を承認 2019/08/28 AFPBB:”弾道弾迎撃ミサイル33億ドル(約3500億円)相当の日本への売却を承認した。米国防総省によると、日本が購入するのは米防衛機器大手レイセオン(Raytheon)製の「SM3ブロック2A(SM-3 Block IIA)」最大73発で、艦載型イージスシステムから発射”(記事抜粋)>  さて、ここまでで事実および推測されることを順序立てて並べてきました。次回は、KN-23配備によってイージス・アショア萩配備計画がどのように影響を受けるか論述します。 『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』ミサイル防衛とイージス・アショア13 ※なお、本記事は配信先によっては参照先のリンクが機能しない場合もございますので、その場合はHBOL本体サイトにて御覧ください。本サイト欄外には過去12回分のリンクもまとまっております。
Twitter ID:@BB45_Colorado まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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