北朝鮮の新型ミサイルが日本に脅威であり、イージス・アショアではどうにもならない5つの理由

西日本の主要地点が射程に入る可能性

3) 射程距離は600km(実績)、690km(合衆国推定)とされ、更に延伸できる可能性がある  前回示したように、KN-23は、九州北部、中国西部、四国北部を射程に収めると考えられる。将来、射程延伸されると西日本全域が射程に収められる可能性がある。  現時点では、隠密行動によって金剛山周辺に展開されると関門海峡連絡橋・隧道、西瀬戸自動車道、玄海原子力発電所、島根原子力発電所、伊方発電所、萩展開予定のイージス・アショア、岩国基地、佐世保基地が射程に収められる。  将来、北朝鮮が得意とする射程延伸改良がなされると、静岡―新潟以西が射程圏内となり得る。  射程距離については、試射の観察記録や、軍事パレードや打ち上げ時の映像から推測、検証が可能である。
南北国境付近の金剛山周辺を射点とした場合の到達範囲0903

南北国境付近の金剛山周辺を射点とした場合の到達範囲
赤線 射程600km(試射によって確認された射程)
青線 射程690km(合衆国で推定される射程)
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命中精度も驚異的で数発で標的破壊可能

4) 半数必中界(CEP: Circular Error Probability)が5〜7mと推測されている  これまで火星シリーズのミサイルは、半数必中界(CEP。発射した半数の着弾が見込める範囲を、目標を中心とした半径で表したもの)が千〜数千メートルとされてきた。これは、初期における慣性誘導方式のみの弾道弾の限界とされ、弾頭を核にするなど一発で広域を破壊できなければ見かけ上の派手さに反してたいした戦果は挙げられない。これはドイツによるV2ミサイルによる都市攻撃から一貫した通常弾頭弾道弾の欠点である。  近年、火星7号(ノドン-1)の派生型であるイランのシャハブ-3Bが、慣性誘導(Gyroscope Guidance)の大幅な性能向上(但し、地形照査などを加えた可能性もある)によってCEPを30〜50mと大幅に改善したとされ、当然これは北朝鮮にも持ち帰られていると考えられる。  北朝鮮では、2017年5月28日に射程400kmとされる精密誘導型Scud(Scud MaRV,NATOコードKN-18)の実験を成功させており、これのCEPは50mとされている。  50m前後のCEPでは、例え通常弾頭であっても二発を打ち込めば迎撃などの妨害が無い限り例えば大型商用原子炉といった大型の建築物に致命的打撃を与えられる。従って、例え核弾頭を搭載しなくても目標物を数発で破壊できるため「使いやすく」「こうかはばつぐん」な戦術兵器となる。  5〜7mのCEPでは、動かない目標ならばほぼすべての目標を二発で確実に破壊できる。例えば橋梁、鉄道、石油・ガスタンク、原子炉、放送局、通信設備などあらゆる固定目標が該当する。軍事目標では、陸上固定基地、空港施設、とくに格納庫、港湾施設、ドックなどの重要目標を超音速で飛来する500kgの弾頭で狙い撃ちできる。原子炉と同じで、装甲強化目標であっても通常弾頭や特殊弾頭(バンカーバスターなど)で破壊できる。  但し半数必中界(CEP)は、事実の確認と検証がたいへんに難しい。
イージス・アショア配備予定地陸上自衛隊むつみ演習場と半数必中界

イージス・アショア配備予定地陸上自衛隊むつみ演習場と半数必中界
外周から
 1000mノドン-1初期型の良い値
 200m ノドンの最近の値とされる
 50mシャハブ3B(ノドン改良型)
 10m KN-23(実際には5〜7mとされる)
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関門橋と半数必中界

関門橋と半数必中界
外周から
 200m ノドンの最近の値とされる
 50mシャハブ3B(ノドン改良型)
 10m KN-23(実際には5〜7mとされる)
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島根原子力発電所3号炉原子炉建屋と半数必中界の関係

島根原子力発電所3号炉原子炉建屋と半数必中界の関係
外周から
 200m ノドンの最近の値とされる
 50mシャハブ3B(ノドン改良型)
 10m KN-23(実際には5〜7mとされる)
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核弾頭搭載せずとも充分な破壊力
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