映像で確認する「ご飯論法」(上級編)。高プロ削除を求める過労死家族会の声を煙に巻いた安倍答弁の姑息さ
初級編」では、高度プロフェッショナル制度(高プロ)を求める労働者のニーズがあるかのような答弁を維持するために加藤勝信厚生労働大臣(当時)が「ご飯論法」を駆使した様子を、国会審議映像から確認した。
今回は同じく働き方改革関連法案の国会審議の中から、安倍首相の答弁を映像で見ていきたい。今回のものは、より分かりにくく、より巧妙で、そしてより悪質である。ただし、安倍首相は答弁書を棒読みしているだけなので、加藤大臣のように、その騙しの手法を理解した上で答弁しているかどうかは定かではない。
取り上げるのは、国会パブリックビューイング「第2話 働き方改革―ご飯論法編―」の後半でも紹介した、2018年5月23日の衆議院厚生労働委員会における柚木道義議員(国民民主党)の質疑に対する安倍首相の答弁である。なお、番組全体の文字起こしはこちら(参照:筆者のnote)にある。
まずは映像をご覧いただき、安倍首相の答弁のどこに論点ずらしの「ご飯論法」が潜んでいるか、ご自身の目で見つけていただきたい。映像は、1回目は字幕なしで、2回目は字幕ありで、そして3回目は、解説の後にポイントを絞って映像を字幕つきで紹介してあるので、そのまま続けてみていただいても、途中で下記の解説に移っていただいても、どちらでも構わない。
【街頭上映用日本語字幕版】国会パブリックビューイング 第2話 働き方改革-ご飯論法編-(音質改良版)(20分56秒~)
どうだろう。答弁の最初に安倍首相は、「過労死、過労自殺の悲劇を二度と繰り返さないとの強い決意であります。政府としては、全国過労死を考える家族の会の皆様を含め、過労死をなくしたいとの強い思いを受けとめ……」と述べている。さらに、答弁のしめくくり部分でも、「いずれにいたしましても、過労死をなくしたいとの思いをしっかりと受けとめ、全力を尽くしていく考えでございます」と述べている。「全国過労死を考える家族の会」(以下、「過労死家族会」と略記)の方々の願いは、面会するまでもなく、十分に受け止めている、と聞こえる答弁だ。
しかし、気を付けてほしい。柚木議員は、「私たちは、高度プロフェッショナルなど、逆に過労死をふやしかねない改革が法案に含まれていることに強い危機感を持っている」という過労死家族会の方々の思いをこの国会審議で伝えていた。過労死家族会の方々は、法案からの高度プロフェッショナル制度の削除を求めていたのだ。
にもかかわらず安倍首相は答弁で、「高度プロフェッショナル制度」には言及していない。これで果たして、「過労死をなくしたいとの強い思いを受けとめ」と言えるのだろうか?
なお、高度プロフェッショナル制度(高プロ)とは、「初級編」でも説明したように、労働基準法の労働時間、休憩、休日、深夜業の規制をはずす(適用除外とする)制度だ。この規制は労働者を縛るものではなく使用者を縛るものだから、その規制がなくなるということは、労働者が自由に柔軟に働けることは意味せず、使用者が残業代を払わずに自由に柔軟に労働者を働かせることができることを意味する(ただし指針により一定の縛りがかかることとなった)。
「定額・働かせ放題」になりかねない高プロを働き方改革関連法案から削除するよう、過労死家族会の方々も野党も労働団体も求めていたのだが、結局高プロは削除されないまま、法案は成立することになる(高プロの施行は2019年4月)。
騙す意図を伴った論点ずらしの不誠実答弁「ご飯論法」。前回の「
過労死家族会の声を受け止めるかのような安倍首相の答弁
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