悪徳商法のような高プロ制紹介。厚労省が駆使した「ご飯論法」の悪質さ

Businessman working too hard

Elnur / PIXTA(ピクスタ)

 前回記事(「厚労省の高プロ制紹介に見る欺瞞。政府は、野党の次は国民を騙しにきた」)に続き、厚生労働省のリーフレット「働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」(参照:厚労省)における高度プロフェッショナル制度(高プロ)の解説文の問題点をさらに検討したい。  厚労省のこのリーフレットの高プロ解説の気持ち悪さは何かに似ている。そう考えていて気付いた。悪徳商法だ。良いイメージを振りまく一方で、相手が知るべき情報を伝えない。さらに、相手の懸念に応えるフリをして、不誠実な回答をして、「ご懸念にはあたらない」と印象操作する。そんな気持ち悪さに満ちているのだ。
高プロリーフレット

厚労省作成のリーフレットより

「手厚い仕組み」?

 前回記事に、ツイッター上でこういう反応があった。 ”〈制度の創設に当たっては、長時間労働を強いられないよう、以下のような手厚い仕組みを徹底します〉って…。規制を外しておいてよく言うわ。1万円渡したら千円返ってきて、これでいい昼飯でも食えと言われている気分だわ…。”  秀逸なたとえだ。
厚労省作成のリーフレット

厚労省作成のリーフレットより

 「手厚い仕組み」というが、「年104日以上、かつ、4週4日以上の休日確保を義務付け」というのは、「手厚い仕組み」でもなんでもない。
厚労省作成のリーフレット

厚労省作成のリーフレットより

 年104日の休日とは、週休2日に相当する休日でしかない。しかも、毎週2日の休日を与える必要もない。4週4日以上であればよいので、28日(4週)のうち24日間は、連続勤務させても違法ではない。  しかも、1日の労働時間は8時間以内といった労働基準法の労働時間規制がすべて適用除外となっているので(使用者はその規定に縛られずに労働者を働かせることができるので)、その24日間については、後述の通り、24時間勤務を連日にわたって求めることもできてしまうのだ。  その他の健康確保措置も、4つの措置は「いずれか」の選択でよく、4つ目の「臨時の健康診断の実施」を選べば使用者の負担は低い。在社時間等が一定時間を超えた労働者に対しては、医師による面接指導の実施が義務付けられているが、医師の指導に強制力があるわけでもない。  にもかかわらず、そのような不都合な事実に目を向けさせないために、年104日以上の休日確保などの措置を「手厚い仕組み」と持ち上げて見せる。詐欺的な手法だ。
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「規制がかかる」と詭弁を弄する竹中平蔵
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