悪徳商法のような高プロ制紹介。厚労省が駆使した「ご飯論法」の悪質さ

行政の判断で対象業務は広げられる

 2つ目のQ&Aはこれだ。 【Q】高度プロフェッショナル制度は、後から省令改正など、行政の判断で対象が広がる? 【A】対象業務や年収の枠組みを法律に明確に規定し、限定しています。行政の判断でこれらが広がることはありません。  やはり、懸念に応えるフリをしながら不誠実な回答を行っている。  高プロは派遣法のように対象業務が拡大していくことが懸念されており、年収要件も下げられていくことが懸念されている。経団連は2005年の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」では、年収400万円以上を対象とすべき、としていた。  従って、高プロは後から対象が広がるのでは、という懸念はもっともだ。しかしこのQ&Aでは、そこに「省令改正など、行政の判断で」と限定をつける。そして、「対象業務や年収の枠組みを法律に明確に規定し、限定しています。行政の判断でこれらが広がることはありません」と懸念を払しょくしようとする。  しかし実際のところを確認しておこう。
厚労省のリーフレット

厚労省のリーフレットより

 まず、対象業務は「省令改正など、行政の判断で」広げることができる。法律には具体的な対象業務が明記されていないからだ。法律の規定は下記でしかない(参照:労働基準法 新旧対照表)。 “(労働基準法 第41条の2 第1項) 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)”  この通り、具体的な対象業務は省令によって定められるのだ。省令は国会審議を経ずに改正することができる。では上のQ&Aの回答は嘘なのか?  よく見ると、「対象業務や年収の枠組みを法律に明確に規定し、限定しています。行政の判断でこれらが広がることはありません」とある。「これら」とは「枠組み」を指すのだろう。つまり、法律に明確に規定した「枠組み」自体は、行政の判断で広がることはない、というのがこの回答なのだ。  確かに「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるもの」という法の規定は国会審議を経ないと変えることはできない。しかし、誰もそんなことは聞いていない。にもかかわらず、このように答えることによって、あたかも具体的な対象業務が行政の判断で広がることはないように装う。巧妙な論点ずらしの手法は、悪徳商法とそっくりだ。  なお、リーフレットには対象業務について、次のように記載されている。
厚労省のリーフレット

厚労省のリーフレットより

“(1)対象は高度専門職のみ ・高度の専門的知識等を必要とし、従事した時間と成果との関連が高くない業務 具体例:金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務、研究開発業務など”  しかし、高プロに関する省令・指針の内容を検討する労政審労働条件分科会には、対象業務の素案さえまだ提案されていない。10月15日の第147回分科会では、下記のように具体的な対象業務の検討は、次回以降に先送りされている(参考:当日配布資料のNo.2
労政審労働条件分科会の配布資料

労政審労働条件分科会の配布資料より

 まだ素案さえ出ていない対象業務が、既にリーフレットに書き込まれている。このことも手続き論として全くおかしな話だ。
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労働者を落とし穴に誘導するリーフレット
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