「よう、落球王!」と言いながらも起用してくれた仰木監督
関西大学野球のスター選手だった葛城だが、キャンプ初日からプロの高い壁に直面することになる。
当時のブルーウェーブの外野陣は、イチロー、田口壮、谷佳知と長いプロ野球の歴史の中でも有数とされる「鉄壁」と呼べる布陣だった。足の速さ、バッテイング、守備と全てにおいてレベルが違い、葛城は自分の力不足を痛感した。
「今思えばですが、プロに長くいられたのも、最初に自分の中にあった小さな自信を粉々にされた経験があったからかな、と思います。『プロの世界はこのレベルにないと長くはできない』と肌で感じることができたので」。
葛城は、もう一つ、恩師の言葉が自身のプロ意識を形成したと話す。
「1軍で試合に使ってもらえるようになった当時、一試合に2度の落球を経験したことがあるんです。その際に仰木彬監督がわざわざ家まで来て、『よう落球王!明日も頑張れよ』と声を掛けてくれて、何食わぬ顔で次の日もスタメンで使ってくれました。悔しくて涙が出た反面、期待に応えたい気持ちが上回り、以降守備練習を死に物狂いで取り組むようになったんです。僕のプロ生活は挫折があったからこそ、守備固めや代打でも使ってもらえたと思いますね」。