鉄道職員の“問題行動”を生み出す「本当の理由」

現場に降りてこない情報

 また、ある大手鉄道事業者の駅員は話す。 「まず情報がほとんど駅員には来ないんです。ダイヤが乱れると列車の行き先や列車種別(特急・快速など)を変更することがありますが、その情報は該当列車には無線で通告されていても駅員は運行状況を把握しているモニターを見ないとわからない。でも、押し寄せるお客さまの対応でモニターをこまめにチェックする暇もない。だから間違った案内をしてしまい、それで怒鳴られたり……。特に終電間際にダイヤが乱れると地獄です」  筆者も何度か終電間際の運転見合わせに遭遇したことがあるが、駅窓口には長蛇の列ができており、少ない駅員が対応に追われていた。終電間際なので他路線への振替輸送も難しく、駅員は「見込み時間の分からない運転再開を待ってくれ」と言うしかない状況。「タクシーを使わせろ」と叫ぶ乗客もいたが、「規則上対応できない」と駅員は答えるのみだった。また、駅構内には数人の警備員がいたために運転再開見込みなどの情報があるかどうか訪ねてみたが、「情報はもらえないし、勝手なことを言ってはいけないことになっている」とのことだった。  これはやや特殊な事例かも知れないが、それでもダイヤが乱れた時に乗客がストレスを感じるのも自然なこと。その対応を情報もろくに与えずに少人数の駅員だけに対応させているのが現実なのだ。 「駅員が対応できないとホームに停まっている列車の車掌や運転士に問い合わせる客もいますが、彼らは運行状況の把握を優先しないといけないので充分な対応ができないこともある。それで乗客から罵声を浴びせられることもあるでしょう。結局、人数が少なく満足な対応ができないことにストレスを感じた乗客が現場職員にさらに文句を言い、それでさらに対応が遅れて……という悪循環になっているということ」(前出の記者)  つまり、件の近鉄の車掌のような状況は、現場の職員を減らしてきた鉄道事業者が招いたことでもあるのだ。
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過剰な「厳格化要求」とSNS拡散という「暴力」
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