文科省が推進する総額2500億円のムダ事業――チリも積もれば山、の典型

東日本大震災後の学校施設耐震化優先により武道場整備に遅れ

 ところで、現在(2016年)は「緊急5か年」の最終年である2013年度終了から2年以上過ぎていますので、計画通りであるならば、既に武道場整備率は70%をとっくに達成している計算になります。ところが、日本武道学会の昨年の公表によると、整備率は未だ61%に止まっているとのことです。この整備の遅れの理由は何なのでしょうか?  実はこれについては、当時の文科省・布村幸彦スポーツ青少年局長が理由を述べています。曰く「耐震化などが優先されたため」とのことです(櫻井美子,神奈川大学,2013年3月)。東日本大震災以降、体育館や屋内運動場など学校施設の避難所としての重要性が再認識され、補強による耐震化や危険な天井材の撤去、落下防止ネット等の設置対策が講じられました。これらの対応費用が優先されたことが、武道場整備の遅れに結びついたと考えられます。武道場整備の遅れには以上の明確な理由がありますので、文科省は整備を意図的に遅らせているわけでも、断念したわけでもありません。  ですが「連載第2回」で書いた「武道場整備費の国庫補助率の嵩上げ措置(整備費の1/2を国が負担)は2013年度限りで終了しました。2014年度以降は国の補助率が2008年度までの1/3に戻ったこともあり、財政難の地方公共団体では武道場整備の速度は確かに鈍化しているようです。今後も緩やかなスピードで整備が進んでいくものと思われます。
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次の学習指導要領に武道必修を継続的に盛り込むのは既定路線
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