写真/Tony Tseng
費用総額を知らない武道関係者が授業内容を軽視する無責任発言
前回、巨額の税金が投入されると指摘した中学校武道必修化問題。私は、武道必修化それ自体は良いことだと思っており、むしろ賛成です。問題は武道場整備費が非常に高額であることと、その費用がどの位かかっているのかについて全く無自覚な武道関係者が、授業の質を極端に低下させる無責任な言動を行っていることだと思っています。
例えば、柔道界には重大事故の危険性を懸念するあまり、柔道授業を「礼儀と教えだけで良い」とか「受け身を覚えるだけで良い」とか、わざわざ武道場を作らなくともできる内容の指導で十分と主張する教育関係者が沢山います。
莫大な税金を使って武道場を建てておいて、授業の内容を教室でも教えられる礼儀や板の間に畳を敷けば教えられる受け身で十分などと発言するのは、世間の納税者への配慮に欠けるのではないでしょうか。ですので、まずは、武道関係者に1棟当たりの武道場整備費がどれほど高額なものかをしっかりと知ってもらう必要があると思っています。
スポーツマーケティングの第一人者である広瀬一郎さんはこう言っています。「学校体育として開始するスポーツはほとんどの人にとって元から『金のかからないもの』として認識される。このコスト意識も変える必要があるだろう」(『新スポーツマーケティング』 広瀬一郎 創文企画 2002年11月)と。武道関係者の中には、このように中学校武道必修化を「金のかからないもの」と思い込んでいるコスト意識の低い人々が多く見受けられるのです。