柔道場なら2500万円、剣道場なら3000万円で建てられるが…
異論もあると思います。この4500万円は柔剣道場の整備費ですが、柔道場、剣道場をそれぞれ単体で建てた場合には整備費は安くなるのではないかという疑問です。確かに各校で選択した武道の単体の武道場(柔道選択なら柔道場、剣道選択なら剣道場)を作れば整備費は安くなります。文科省は補助の対象となる上限の面積として柔道場は250㎡、剣道場は300㎡と定めていますので、前述の平米単価99,400円と掛け合わせると柔道場は2500万円、剣道場は3000万円で建てられるということになります。
ですが、どの武道を選択するかに関わらず、武道場の設置の際には柔剣道場を建てるというのが原則としてあるようです。柔道を選択しても、校長が転任するなどして学校の方針が変わり、剣道に鞍替えするというケースもあるでしょうし、少なくとも柔剣道場を設置しておかないと将来的に柔軟に武道教育に対応できないという言い分なのだと思います。柔剣道場であれば、他の武道(空手、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道など)にも対応が可能だということです。
授業でどの武道を選択するかに関わらず建てられるのは柔剣道場
中学校武道必修化を推進した日本武道協議会には武道9団体が加盟しており、武道必修化で選択されている種目は柔道64.8%、剣道34.4%、相撲3.2%、空手道1.9%と大きな偏りが見られる(月刊武道 2015年12月号)とはいえ、選択率の低い少数派の武道団体に対する配慮も必要なのでしょう。そのため武道場を建てる際には少数派の武道の稽古にも適合するように総合武道場(柔剣道場)が設置されるのではないかと推測します。
昨年初めて公表された全国武道場実態調査でも既存の学校関係武道館12539館の55%が総合武道場(柔剣道場)であり、柔道場単体は14.5%、剣道場単体は13%でした(月刊武道 2015年6月号)。このデータからも、昔から学校施設の武道場は柔剣道場の設置が原則であったことが伺えます。
以上の理由で武道場とは、原則的に柔剣道場を指し、文科省が通常、予算を立てる際には武道場の建設単価を4500万円と見積もっているということが分かりました。
次回は文科省が全国にいくつ武道場を作ろうとしているかを探ります。これが分かれば「連載第1回」で述べた「中学校武道必修化費用総額が新国立競技場建設費旧案2520億円並み」という仮説の信憑性が格段に高まります。
(※注)2009年当時の平米単価99,400円は現在では建設費指数の変動により若干低下しています。450㎡の柔剣道場1棟の整備費は約4500万円より幾分安くなっていますが、本稿連載では便宜上、金額に変動がないものとしてシミュレートしています。尚、地方が450㎡を超える面積の柔剣道場を設置した場合には、超過した分の面積の費用は地方が全額負担し、国は450㎡分の整備費に対して補助を行います。
<取材・文/磯部晃人(フジテレビ) 写真/
Tony Tseng>
【中学校武道必修化の是非を問う 連載第2回】