ハビタブル・ゾーンにある系外惑星。水色がこれまでに見つかっていたもので、オレンジ色が今回見つかった9個。参考として金星、地球、火星も含まれている Photo by NASA Ames / N. Batalha and W. Stenzel
今回の発表のもうひとつの目玉は、系外惑星であると分類された1284個のうち550個が、地球のような岩石が主体となっている天体であり、さらにそのうち9個は、その惑星系の「ハビタブル・ゾーン」の中にあることがわかった点である。
ハビタブル・ゾーンとは、ある恒星系において、恒星との距離、またその恒星が出すエネルギーなどから、生命が誕生するのに適した(とくに水が液体として存在できる)環境になると考えられている領域のことである。たとえば太陽系であれば、地球のみがハビタブル・ゾーンに含まれており、お隣の惑星である金星や火星は外れている。
これまでの時間のかかる分析から、ハビタブル・ゾーンにある系外惑星は12個が見つかっていた。そこへ今回の9個が加わり、合計は21個となった。
ただ、今回見つかった9個を含め、これらハビタブル・ゾーンにあるとされる系外惑星で、生命体の活動が確認されたわけではない。そもそも地球のような環境の惑星が他にもあったからといって、そこに生命や、ましてや私たちのような知的生命体が生まれると決まるわけではない。
しかし、これまでのケプラーの観測結果から考えると、控えめな推測でも、この銀河系には100億を超える系外惑星がハビタブル・ゾーンの中にあると見積もられている。その中のどこかに、地球と同じように生命が生まれている星があると考えるのは難しいことではない。むしろ「ない」と考えるほうが不自然だろう。
私たちが生きている間に、どこかの系外惑星に住む知的生命体とコンタクトできると考えるのは楽観的にすぎるかもしれない。しかし、ケプラーの観測と科学者の研究によって、いつもの夜空に光る星は、単なる星ではなく、そこにはそのまわりを回っている惑星があり、さらにそこで毎日を過ごしている生命体がいるかもしれないと考えられるようになった。
ケプラーの観測は現在も続いており、これまでに得られたデータの分析も続いている。sらに2018年にはケプラーの後継機で、さらに地球に似た惑星を見つけることに特化した「TESS」という人工衛星の打ち上げも予定されている。
いつか本当に、どこかの惑星で生命がいる証拠が見つかる日がくるかもしれない。
ケプラーの後継機となる「TESS」の想像図。2018年ごろの打ち上げが計画されている Photo by NASA / MIT
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。
Webサイト:
http://kosmograd.info/about/
【参考】
・Kepler Mission Announces Largest Planet Collection Ever Discovered | NASA(
http://www.nasa.gov/press-release/nasas-kepler-mission-announces-largest-collection-of-planets-ever-discovered)
・FALSE POSITIVE PROBABILITIES FOR ALL KEPLER OBJECTS OF INTEREST:
1284 NEWLY VALIDATED PLANETS AND 428 LIKELY FALSE POSITIVES(
http://www.astro.princeton.edu/~tdm/koi-fpp/ms.pdf)
・Kepler and K2 Missions | NASA(
https://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/main/index.html)
・Kepler spacecraft rakes in nearly 1,300 planets : Nature News & Comment(
http://www.nature.com/news/kepler-spacecraft-rakes-in-nearly-1-300-planets-1.19903)
・Kepler adds 1,284 exoplanets to its total – Spaceflight Now(
http://spaceflightnow.com/2016/05/10/kepler-adds-1284-exoplanets-to-its-total/)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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